グルテンフリー食品は、本来セリアック病患者の治療のために販売されている食品ですが、アメリカでは2007年ごろからSNS等を通じて「健康に良い」、「減量効果がある」などといった情報発信が増え、セリアック病患者ではないにも関わらず、グルテンフリーを実践する人が増えたといわれています。
アメリカでは、健康な人がグルテンフリーを実践した場合の影響についていくつかの調査結果が報告されていますが、減量への効果は認められておらず、むしろ冠動脈疾患や2型糖尿病のリスク増加や、腸内細菌叢(そう)への悪影響の可能性が示されています。
その理由として、欧米の食事ガイドラインでは、ビタミンやミネラル、食物繊維を多く含む全粒粉を用いたパンなどの穀物製品を摂取することが推奨されていますが、グルテンフリー食品では小麦などの全粒粉の代わりに精製された米やでんぷんなどを用いることが多く、全粒粉に含まれる栄養成分の効果を得られないためと考えられます。
また、グルテンフリー食品では、小麦を用いた食品と比較すると美味しさでは劣ることが多く、食感などを改善する目的で、小麦を用いた食品よりも油脂や糖類を多く使用している食品が多いことも理由として考えられます。
セリアック病の人にとっては、グルテンフリーを実践することで症状が軽快するのですから、グルテンフリー食品はなくてはならない大切なものですが、医学的にグルテンを避ける必要のない人にとっては、むしろ健康を害する可能性もあるということです。
SNSなどを通じて誰でも食に関する様々な情報を発信できるようになり、科学的根拠が乏しい情報も増えています。私たち自身が様々な情報を比較検討し、自分にとって適切な食生活を実践できる力をつけることが大切です。