Q.小麦の種子はなぜホームセンターなどで購入できないの?

A.主食になる穀物だから。
日本人の主食となるイネ、ムギ、ダイズなど主要穀物は、天災など不測の事態や病害が発生した場合たいへんな影響をもたらすので、国民の生活が不安定にならないように、備蓄を含め国と県が管理しているのです。ホームセンターなどで購入できる野菜の種子などは、民間の種苗(しゅびょう)会社が品種改良して販売しているのとは違います。

Q.私たちが作ることができる小麦にはどんな品種がありますか?

A.関東以西では、「農林61号」が長年栽培されてきました。今回生育を見守ることになるのが「農林61号」です。しかし、2011年には、「さとのそら」などが育成され、生産地では「農林61号」と置き換わってきています。

Q.寒いところで育てようとしたら?

A.「農林61号」は冬の寒さや雪の耐性がありませんので、北海道や東北の寒冷地では、作ることができません。「農林61号」と北の品種では低温要求度が異なります。北海道はめん用品種で「きたほなみ」、パン用品種に「ゆめちから」があります。
ちなみに、それらと今回紹介する「農林61号」にはちょっと違う面があります。それは「知的財産所有権」です。「農林61号」は1944年に育成されました。もう75年が経ち、知的財産所有権などの制度がない時代に育成されたものなのです。 しかし、最近20年以内に育成された「きたほなみ」、「さとのそら」「ゆめちから」などの品種には特許権があり、種子の増殖やそれを販売するには、育成権者の許諾を必要とします。

Q.育成権者の許諾って何ですか?

A.種子は育種家の財産なのです。
育種家によって改良された品種は、「奨励品種決定調査」という制度によって、それぞれの地方適応性の可否が調査されます。農家に普及栽培できるかどうか、各都道府県が栽培調査して、採用するかどうか決定します。採用された新品種は、農家に普及・配布するため採用県の責任で種子の増殖(種子法)が行われ、育成の対価が支払われます。
育種家は、種苗登録の手続きをして、知的財産所有権といういわゆる特許権を持ち、登録後20年間保証されます(種苗法)。
農林水産省が種苗登録を行っています。
なお、種子の増殖が義務づけられていたこの種子法は、2018年4月に撤廃され、継続運用するかどうかは都道府県の自主判断に委ねられました。現在、種場の都道府県では、自主予算で継続されていますが、将来は不透明な状態にあります。

Q.種子に消毒は必要ですか?

A.がっしりした小麦を育てるには、充実した健全な種子を用意しましよう。農協から購入した種子は、普通、種子消毒は要らないでしょう。健全な種子を供給してくれているはずです。病害にかかった畑から自家採種した種子を利用する場合には、種をまく前に種子消毒が必ず必要です。

種子消毒には、種子を湯につける温湯浸法と薬剤による方法があります。古くは風呂の残り湯に種子を浸漬する“風呂湯浸法”が利用されてきましたが、現在では温度制御が効いた専用機器を利用した“冷水温湯侵法”が利用されています。しかし、温度管理が正確でないと十分な効果がでないため、薬剤消毒がいいでしょう。

薬剤はベンレートT水和剤、チューラム水和剤などがありますが、取り扱いは農協ほか地元の指導機関に相談するとよいでしょう。