梅雨のさなかの不安定なお天気でしたが、雨雲も子ども達の元気に吹き飛ばされたのか、6年生がグラウンドに現れた途端に太陽が顔をのぞかせました。 「みんなの心がけのおかげですね。今日は為末先生のすごいところ、すばらしいところをたくさん学んでください」と弘中幸伸校長先生からみなさんへのお話。 保護者の方々はもちろん、下級生や近隣学校の先生も見学に訪れ、大勢のギャラリーが見守る中で授業スタートです。
「今日はかけっことハードルのけいこをします。じゃあ一緒に走ろう!」 為末先生が先頭に立って、まずは全員でランニングです。
子ども達は授業の前に、為末先生が現役時代に出場した世界陸上のレース映像を見ていたそう。世界の舞台で戦っていたトップアスリートと一緒に走っているとあって、最初はみんなソワソワ落ち着かない様子。 それでも「横向きでスキップしてみて」「後ろ向きに走って」と為末先生から次々と課題が出されると、だんだん真剣な表情に。その後、全員でゲーム感覚の体操をしているうちに、みんなの表情がほぐれて笑顔がはじけました。
続いて、ハードル走に欠かせないスタートダッシュの練習です。 為末先生が「走るために大切なことって何だろう?」と質問を投げかけると「腕を振る」「前を見る」「息を止める」など、さまざまな意見が飛び出しました。 「どれも大切だけど、一番大切なのは体の姿勢をまっすぐにすることです。足を90度に開いて座ってごらん。そして頭のてっぺんを指でつまんで、そのまま上にひっぱるようにして立ち上がってみて。 手は力を抜いてブランとして、足を元に戻す。これが正しい姿勢。そのままスキップしてみましょう」
正しい立ち方がわかったところで、今度はダッシュする時の姿勢を指導。 「前足に体重の8割をかける気持ちで、重心を前にしっかりかけてみて。 そうすると、パッと走り出せるから」 為末先生の真似をして、前のめりに上半身を傾けてトレーニングする子ども達。「先生、転んじゃいそう!」「いいよ、それくらいグッと前に出ていいよ!」 あちこちで会話が飛び交いながら、スタートダッシュをくり返します。そうするうちに、上半身を倒して走り出すとスピードが出やすくなることを、体で感じた人も多かったようです。
最後は、いよいよハードルの練習です。グラウンドには一番低い高さに設定されたハードルが5レーン用意されました。
「大事なことは、上に思いっきりジャンプすること。上に上に跳んでみて!」
子ども達に自由に跳ばせるのが、為末流のハードル授業。子ども達も軽快にハードルを跳び越えていましたが、為末先生がハードルの高さを少しずつ上げていくと「高い!」「ムリ〜!」と戸惑いの声が…。
最終的はハードルが低いままのもの、中くらいのもの、高いものの3種類ができました。「どこでもいいよ、好きなところを跳んでみて。 ハードルを倒しても気にしないで走ってみよう!」と為末先生が励ましますが、経験したことのない高さだけあって、一番高いハードルのレーンは誰も跳ぼうとしません。そんな中、ひとりの男子が果敢に高ハードルにチャレンジ。 すると1人、また1人と後に続いていきます。転んでしまったり、ハードルを倒した子もいましたが、最後は列ができるほどの人気レーンになりました。
「今日はみんな、最初より高いハードルを跳ぶことができましたね。今までできなかったことができた自分を褒めてあげましょう。拍手!」
先生に褒められて、子ども達はみんな満足そうな表情。
自分で「これなら跳べるかな」と判断してハードルの高さを選び、それを達成する喜びを感じてほしい。そんな為末先生の思いを、子ども達もしっかりと受け止めたようです。