琵琶湖の東岸に位置する滋賀県彦根市は、戦国時代に多くの武将が駆け抜け、江戸時代には35万石の城下町として栄えた歴史あふれる街。 江戸幕府の大老・井伊直弼の居城だった彦根城は、全国に4つしかない国宝の城として絶大な人気を誇りますが、最近ではゆるキャラ「ひこにゃん」のふるさととしてもおなじみです。 今回の爲末大学食育学部は、そんな彦根市の河瀬小学校が舞台。 明治22年創立、125年の歴史を持つ伝統校で「智徳をみがき、健康でたくましく生きる河瀬の子の育成」を教育目標に、子ども達が共に学び合う学級づくり・学校づくりを目指しています。


当日はあいにくの雨模様。1時間目は爲末大学食育学部としては初めて、体育館での開催となりました。6年生79名の前で北沢正彦校長が「この1年みんなで夢についてさまざまな勉強をしてきましたが、 今日は夢を考えるだけでなく、夢のための体づくりについて2人の先生にしっかり教わってください。それでは大きな声で呼んでみましょう!」と呼びかけると、全員で「為末先生!」と大コール。

ハードルを跳ぶために -目標設定への道筋-

朝の冷え切った空気に、はじめは寒そうに縮こまっていた子ども達でしたが、「元気にがんばっていきましょう。オー!」と為末先生が声をかけると、「オー!」とすかさずカッツポーズ。 全員で体育館を軽くジョギングした後、為末先生の動きに合わせて両手両足をついて四つんばいで歩いたり、逆向きに動いたりしているうちに、みんなの表情もほぐれてきました。 クロスステップや2ステップなど、体育館をめいっぱい使って動き回った後、円陣を組んで体育の時間恒例の楽しいウォーミングアップ体操です。

2人組になってジャンプしながらの足ジャンケンや、背中におんぶされた人がおんぶした人の上半身をぐるっとまわるチャレンジなど、ゲーム感覚の体操に大盛り上がり。 子ども達の輪の中でひときわ高く飛び上がった為末先生のジャンプ力に「何あれ!」とビックリする子どももいましたが、 先生に負けまいと全身を使って動きまわる河瀬小の子ども達の元気っぷりに、為末先生も終始ニコニコ楽しそうです。

最後は為末先生の号令に合わせて前に飛んだり、横に飛んだり。「僕が右と言ったら、左と言いながら左に飛ぶよ! 次は前って言いながら逆の後ろに飛ぶよ!」と 次々出されるトリッキーな動きに、みんな右往左往。体も温まってほぐれたところで、ハードルに必要なダッシュの練習です。

障害物をどううまく跳び越えたらいい? -目標達成のポイント-

「足が速くなるために、一番大切なことは何でしょう? それは姿勢です。体がまっすぐになっていることが、とても大切なんです。じゃあ両足のかかとを床につけて、つま先を90度に開いて立ってみよう。そのまま、しゃがんでみて。 そして、自分の頭のてっぺんを指でつまんで持ち上げるようにして立ち上がってみて。その状態がまっすぐの姿勢です。その姿勢のまま、走ってみよう!」

為末先生の号令で、ダッシュ開始。普通のダッシュ→スキップ→高速スキップを体験したら、「今度は、できるだけ少ない歩数でスキップしてみよう!」と為末先生。 歩幅を大きく取って跳ぶように駆ける走法は、ハードルを上手に跳ぶための大切なポイント。体育館狭しと全力ダッシュする子ども達の姿に「よし、手を大きく使って走ってみよう!」と為末先生の指導にも熱が入ります。

そしていよいよ、子ども達の前に7レーンのハードルコースが用意されました。ハードルの高さは3段階。「好きなところを選んで跳んでみて!」と為末先生が促すと、ハードル走に慣れない子ども達からは 「こんなの跳べないよ!」と不安の声が…。「大丈夫! とにかく高く跳ぶことだけ考えて、上へ上へジャンプしてみよう!」という先生の励ましに後押しされて、それぞれが選んだ高さのハードルにチャレンジ。 すると、はじめは心配そうにしていた子ども達たちが軽々とハードルを越えていくのを見て、為末先生も「そうそう! いけいけ!」と背中を押します。

自分でハードルの高さを選んで超えていく -目標設定-

みんながハードルに慣れたところで、先生から「今度は体を勢いよく出してみよう。前に前に、ふすまを突き破る気持ちで体を前に倒してみて!」とアドバイスが。 これでスイッチが入ったのか!?「うおりゃー!」と声をはりあげて勢いよく跳んでいく子どもが続出。「ジャンプ力があっても、これはアカンわ」なんて漏らしながらも、ハードルを倒す子はほとんどおらず、 前につんのめる勢いでハードルをどんどん越えていきます。

さらに高さを変え、最後は5段階の高さのハードルレーンが並びました。一番高いハードルは中学生レベルの約90cm。 見たこともない高さのハードルを前に「大丈夫かな?」「ムリかもしれん!」なんてドキドキしながら見ていた子ども達でしたが、言葉とは裏腹に一番高いレーンには行列が。 「最後まで気を抜かないで、しっかり跳ぼう! 足の裏をゴールに向けて、蹴破るみたいな気持ちで!」と為末先生の声が体育館に響く中、怖がることなく高いハードルを跳び越えていく子と、低いハードルに変わる子、さまざまな反応が表れました。

まとめ  -目標達成はできたか-

体育館の狭い場所でのハードル授業となりましたが、そのぶんいつもより先生と子ども達の距離が近く、たくさんの会話が交わされ終始和やかな授業となりました。 為末先生もどこにいるのかわからなくなってしまうほど、子ども達の中にまぎれて親密な雰囲気。人なつっこくて勢いのある河瀬小のみんなのパワーに、為末先生も驚いていました。

なかには高いハードルから低いハードルへ変えた子もいましたが、為末先生は「高いハードルを越えることだけが全てじゃない」といいます。自分で判断してハードルを選び、それをクリアする喜びを感じること。 それが爲末大学食育学部のめざす体育の授業です。子ども達が自分で選んだハードルを臆することなく跳び越えていった今日の授業に、為末先生は満足そうでした。

最後にみんなで記念撮影をして、1時間目の授業は終了です。


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