和歌山県中部に位置する有田市は、海と川と山に包まれた自然美しい街。京都から熊野詣に出かけるための熊野古道紀伊路など史跡が多いエリアですが、なんといっても日本屈指のブランドみかん「有田みかん」の産地として全国的に有名です。有田川を囲むように広がる山の斜面にはびっしりとみかんの樹が植えられ、収穫期には鮮やかなオレンジ色が一面に広がります。 今年度最後の爲末大学食育学部は、有田市の東部にある市立宮原小学校にて開校されました。当初は前年10月に開催予定でしたが、全国で大きな被害をもたらした台風19号の影響でやむなく延期に…。この日も前日の冷たい雨でグラウンドでの開催があやぶまれましたが、授業が始まる前には雲の切れ間から太陽の光が差しこみ、天気も回復。満を持しての開催となりました。 今回は5年生、6年生の2学年4クラスの子どもが授業に参加。



「台風で延期になってしまったけれど、今日はみんなが待ちに待っていた為末先生がいらしています! 『夢を実現するためにがんばっている今が一番美しい』という為末先生の言葉に耳を傾けてください。それでは、みんなで先生を呼んでみよう!」と藤井秀之校長のかけ声で、全員で「為末さーん!」と大コール。校舎から為末先生が颯爽と登場しました。

ハードルを跳ぶために  -目標設定への道筋-

「今日はハードルの練習をしましょう。まずはみんなで走ろう!」 大勢の保護者や他学年の子どもが見守る中、為末先生の第一声で全員で軽いランニングからスタート。スキップやジャンプ、柔軟体操でしっかりウォーミングアップをした後は、みんなで大きな円を作って恒例の楽しい体操の時間です。

ジャンプしながら手足を動かしたり、2人組になって足ジャンケンで勝負したり。背中におんぶされた人が、おんぶしている人の上半身を一周する運動では、地面に足をつけずになんとか回ろうとみんな必死! 「これはムリやろう!」「ギャー落ちる!」とあちこちから叫び声が上がりましたが、成功した子も失敗した子もみんな笑顔で楽しそう。

最後はみんなで手をつなぎ、為末先生の号令で一斉にジャンプ。「僕が前!と言ったら、みんなは前!と言いながら前に跳ぼう」とかんたんな動作から始まりましたが、「僕が前!と言ったら、後ろ!と言いながら後ろに跳ぶよ」「僕が前!と言ったら、前!と言いながら後ろに跳ぶよ」と、どんどん複雑な動作になっていきます。逆の方向に跳ぶ子、反対を言ってしまう子続出で大混乱でしたが、みんなの表情もほぐれて為末先生ともすっかり仲良しになったようです。

障害物をどううまく跳び越えたらいい? -目標達成のポイント-

ウォーミングアップが終わったところでグラウンドにハードルが並べられ、7本のハードルレーンが用意されました。ハードルの高さは5段階。一番高いハードルは中学生レベルの高さに設定されています。

「ハードルで大切なのは、まっすぐな姿勢で跳ぶことです。みんなはゲームをすると思うけど、ずっとゲームをしていると首が前に出てしまい、姿勢が曲がってしまいます。まずは、まっすぐな姿勢を覚えよう。かかとを床につけて、つま先を90度に開いて、そのまましゃがんでみて。そこから頭のてっぺんを指で持ち上げるようにして立ち上がってみよう。その状態が、まっすぐの姿勢です。そのまま、ハードルを跳んでみよう。ハードルの上にふすまがあると思って、ふすまを突き破るような気持ちで跳んでみて! 好きな高さを選んでいいよ!」

為末先生からのアドバイスを受けて、早速ハードル走スタート!…のはずが、ハードル走に慣れていない子どもが多いせいか、みんな不安そうにハードルを見つめるばかり。「大丈夫、上に上にジャンプすれば跳べるよ!」という為末先生に背中を押されて、1人また1人と低いハードルにチャレンジ。はじめは恐る恐る跳んでいた子ども達も、難なく跳べることがわかって、次第にダッシュに力が入っていきます。

その一方で、一番高いハードルにチャレンジする子どもが続々と出現! 見たこともない高さのハードルに果敢に挑戦する先輩たちの姿に、ハードルをクリアすれば「おー!」、ハードルを倒せば「おしいー!」と、下級生たちから大きな歓声が上がりました。

自分でハードルの高さを選んで超えていく -目標設定-

はじめこそ尻込みしていた子ども達でしたが、気がつけば全員が自分でハードルの高さを選び、全てのレーンに順番待ちの列ができていました。途中で高さを変える子もいれば、同じ高さをコツコツと練習する子、一番高いハードルへチャレンジを続ける子もいて、ひとりひとりが自分のスタイルでハードルに立ち向かっています。

それを見た為末先生からは「今度は足の裏をゴールに見せるようにして跳んでみよう。体をグッと前に倒して跳んでみて!」とさらなるアドバイスがとびました。子ども達もさらにパワーアップ!? 果敢にハードルに立ち向かっていきます。ハードルに足をひっかけて倒れる子もいましたが、「大丈夫、行ける行ける!」と為末先生に励まされ、最後まで走り抜いていました。

最後は、おまちかねのデモンストレーションタイム。ハードルの高さはオリンピック男子ハードルと同じ、91.4cmにまで上げられました。見たこともない高さに、どよめく子ども達。そんな中、まずは文成中学3年生の大浦竜城くんをはじめとする陸上部の選手たちがチャレンジ。難なくハードルを乗り越える姿に「おー!」と驚きの声が上がりました。続いて、為末先生の番です。レーンを駆け抜けると、子どもや先生、保護者たちみんなが「うわあ、すごいーっ!!」と大歓声。ハードルぎりぎりを飛び越えていく無駄のない動きに、見ほれてしまう人も多かったようです。

まとめ  -目標達成はできたか-

2月の冷たい空気の中での授業となりましたが、寒さを忘れて夢中で走っていく子ども達の姿に、為末先生は終始満足そうでした。「ハードルが上手な人は、足も速くなります。失敗してもいいので、姿勢はまっすぐ、目線もまっすぐゴールに向けて、最後まで走るようにしてください」

まとめの挨拶をして、最後に全員で記念撮影をパチリ。


2015和歌山国体に向けて︎

毎年開催されている国内最大の国民スポーツの祭典 国民体育大会、いわゆる国体が今年は当地、和歌山県で開催されます。 今回は、その国体をめざす文成中学陸上部の選手たちが1時間目の授業に特別参加。為末先生から個別技術指導も行われました。

参加選手の声

「実際にオリンピック選手の走りを見ることができて、とても興奮しました。 また、僕の走りを見て、アドバイスをしていただきうれしかったです。 これからの練習に役立てていきたいと思っています。 素晴らしい経験をさせていただきありがとうございました。 」

「本来は小学生への授業でしたが、為末さんが来てくださるということを聞き、無理を言って参加させていただきました。 授業では、為末さんの走りを間近で見せていただき、また、僕たちの走りを為末さんに見ていただいてアドバイスをして頂くという素晴らしい経験ができました。 この経験を生かしてこれからも練習に励んでいきたいと思います。」

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