全粒粉
2021.10.15
第1回 全粒粉とは:不足栄養素を補う全粒粉

監修:東京農業大学教授 谷口亜樹子先生

全粒粉とは何か:特徴は食感と栄養価

最近、パスタの麺、ビスケットやクッキー、パンなどの商品に全粒粉が使われていますが、全粒粉は普通の小麦粉と何が違うのでしょうか。全粒粉と言う言葉は知っていても、意味はよくわからず、健康志向が強い人の食べ物、身体に良さそうだから、というイメージで食べている方が多いようです。

全粒粉は、言葉のとおり、小麦を丸ごと挽いて全部を粉にしたもので、普通の小麦粉では取り除かれる「ふすま」と呼ばれる外皮、また、発芽に必要な根と芽の元となる「胚芽」を含んでいます。

*小麦の断面図イメージ

出典:株式会社ニップン

ふすまは外皮なので繊維質が多く、胚芽は発芽に必要な脂質やビタミンが多く、ふすまも胚芽もミネラルを多く含みます。そのため、全粒粉を使った食品は風味が豊かになり食欲をそそります、そして繊維質のしっかりとした歯応えは噛む回数も増やし、唾液や消化液の分泌を促し、口臭予防や消化を助け、代謝が良くなることも期待できます。

全粒粉の栄養素:ビタミンやミネラル、脂質が豊富

全粒粉は普通の小麦粉(強力粉1等)と比べビタミンやミネラル、脂質が豊富なことが特徴です。なかでも、日本人が不足しがちな栄養素や成分として知られる、ビタミンB1、カリウム、鉄は、普通の小麦粉の3倍以上、マグネシウムは4倍以上、食物繊維は4倍以上含んでいます。これら栄養素の働きは、第2回で解説します。

食品としての有用性:食パン1枚で食物繊維総量は約3.5g

日本人は食物繊維の摂取量が少なく、特に60歳未満の年代層では食物繊維の摂取が低いことがわかっています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では食物繊維の1日の摂取の目標量は、男性21g以上、女性18g以上(ともに18〜64歳)とされていますが、「令和元年国民健康・栄養調査報告」から20~59歳では、1.2~3.5g程度が足りていません。

普通の強力粉の食パンを全粒粉100%の食パンに変えると、6枚切りの食パン1枚で約2.7gの食物繊維を補うことができます。いつもの食パンを全粒粉の食パンにするだけでも、不足しがちな栄養素の摂取を簡単に改善できることが、全粒粉の魅力といえるでしょう。

*日本人の年代別 食物繊維摂取量(平均値)

出典:令和元年度国民健康・栄養調査 栄養素等摂取量
   日本人の食事摂取基準(2020年版) を加工して作成

※計算の方法:全粒粉の食パンと食物繊維総量

普通の強力粉の食パンを全粒粉100%の食パンに変えて食物繊維を補うことを考えた際の計算方法です。小麦粉100gから食パンは約180gできます。食パン1斤は340g以上と決められているので、1斤の食パンには小麦粉が189g、6枚切りの食パンだと1枚当たり小麦粉が約31.5g含まれる計算になります。

強力粉1等の食物繊維総量は2.7g、全粒粉の食物繊維総量は11.2gで、100g当り8.5gの差があります。全粒粉の食パン1枚当たり約2.7gの食物繊維を補うことができる計算になります。