全粒粉は、身体に良いというイメージがありますが、なぜ身体に良いのでしょうか。全粒粉の健康効果について考えてみましょう。
「米国人のための食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans, 2020-2025)」では、穀物摂取の半分以上を全粒穀物にすることを勧めています。そのくらい全粒穀物の摂取が重要なことを意味しています。国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)によると、食物繊維の摂取量が多いほど死亡リスクが低い傾向があります。これは、食物繊維の摂取が良いということです。食物繊維の摂取量を増やすために、豆類や野菜類、果物類を多く食べるか玄米やシリアルや全粒粉パンなどの食物繊維の多い穀類を食べるのが良い可能性があるとされています。
全粒粉には食物繊維が100g中11.2gと1割以上含まれています。食物繊維を摂ると、満腹感が得られ、摂取カロリーの抑制につながります。整腸作用があり、腸に移動する間に成分を吸着し、排出する作用がありますので、腸の掃除をしてくれます。ただし、胃腸の弱い方はお腹がゆるくなる可能性がありますので、注意が必要です。
また、全粒粉はグリセミック・インデックス(GI)が低いことが期待されますが、実際はどうでしょう。GI値とは食品に含まれる糖質の吸収の度合を示すもので、血糖値の上昇を数値化したものです。数値が低いほど、糖質の吸収が遅く、血糖値の上昇が抑えられるということになります。
血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが多く分泌され、糖尿病や肥満の原因になります。ブドウ糖を基準値100として比較する値で、多くの研究からいろいろなGI値が報告されています。シドニー大学のホームページを使って15件ほどのGI値を比較すると、普通の強力粉の食パンはGI値74に対し、全粒粉パンは71とほとんど違いはありません。全粒粉にはふすまが1割程度含まれているので、その分のGI値が下がる計算になりますが、GI値の低下は4%程度の違いになっています。
ビタミンやミネラルは、生体調節機能など身体をつくる、動かす上で必要不可欠な栄養素です。全粒粉には、普通の小麦粉に比べ、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。
ビタミンは特にB1・B2・B6が多いのが特徴です。ビタミンB1は糖質をエネルギーに換える時に必要なビタミンで、糖の分解に関与しています。
ミネラルは特に鉄、カリウム、カルシウムが多いのが特徴です。鉄は、全身に酸素を運ぶヘモグロビンとして不可欠な栄養素で、これが不足すると集中力の低下や、頭痛、食欲不振、筋力低下や疲労感といった症状が起きます。カルシウムは骨や歯を形成するのに必要です。カルシウムの99%は歯や骨に存在しますが、1%は止血や筋肉の収縮にも関わっています。カリウムは細胞内のナトリウムを排出して、体内の水分バランスを調節する働きがあり、むくみ予防に関係します。ただし、腎臓の悪い方は摂り過ぎには注意しましょう。
*小麦粉の成分
小麦の表皮(ふすま)には、不溶性のポリフェノールが多く含まれます。小麦の表皮でよく知られているポリフェノールの一つにアルキルレゾルシノールというものがあります。このポリフェノールは抗酸化作用があり、生体調節機能があります。つまり、ポリフェノールは老化や生活習慣病の予防に役立ち、生活のリズムを整えてくれる優れものなのです。
全粒粉は、普通の小麦粉と同じ量を摂取しても、食物繊維、ビタミンやミネラル、ポリフェノールなど、私たちの身体に良い成分をたくさん含んでいます。