レジスタントスターチ
2022.8.31
第1回 レジスタントスターチとは?

監修:福山大学教授 井ノ内直良先生

レジスタントスターチの栄養

最近、話題のレジスタントスターチ(resistant starch、RS)とは一体どのようなものでしょうか? 日本語では、「難消化性デンプン」と言われています。食品の中でも、米、小麦、トウモロコシ、大麦などの穀物や、ジャガイモ、サツマイモなどのイモ類、エンドウやアズキ、インゲンマメといった豆類などに多く含まれている栄養成分はデンプン(ブドウ糖が多数結合した多糖類)であり、デンプンは水と共に加熱調理すれば小腸で完全に消化・吸収されるエネルギー源として評価されてきました。

ところが、今から40年ほど前の1980年代に、小腸においても、デンプン分解酵素であるアミラーゼによって完全には分解されないで、一部は大腸にまで達するデンプンが存在することが明らかとなり、そのようなデンプンをレジスタントスターチと呼ぶようになりました。

現在、レジスタントスターチは一般に、「健康なヒトの小腸内での酵素消化作用を逃れるデンプンおよびデンプン分解産物」と考えられています。

レジスタントスターチの分類

レジスタントスターチは性質の違いによって、次の4種類に分類されています。


(1)レジスタントスターチ1(RS1)

(性質)デンプンが細胞壁内に包み込まれているなど、物理的にデンプン分解酵素が作用できないもの
(食品例)全粒穀粉、精製度の低い穀物、パスタなどのデンプン密度の高い食品など
(生理機能)全粒粉のパンなどは便量が増して整腸作用が得られ、血糖上昇が穏やか、心疾患リスク低減の可能性などが報告されています。

*糊化:デンプンを水分と一緒に加熱した時に、水を吸って膨潤し、糊(のり)のような粘りがある状態になることを『糊化(こか)』という。

(2)レジスタントスターチ2(RS2)

a.(性質)デンプンが結晶構造を保っている生デンプン
(食品例)未熟バナナ、生ジャガイモなど
b.(性質)アミロース含量の高いデンプン
(食品例)高アミローストウモロコシデンプン、高アミロース米デンプンなど
(生理機能)RS2には、腸内環境改善効果、血糖上昇抑制効果、血液中のコレステロールや中性脂肪の低下効果、炎症性腸疾患予防効果などが報告されています。


(3)レジスタントスターチ3(RS3)

(性質)糊化したデンプンが冷却後、放置されたときに形成されるデンプン(老化デンプン)
(食品例)各種老化デンプン、および老化デンプンを含む食品(冷えご飯、硬くなったパンなど)
(生理機能)デンプンの老化に伴い、デンプンを構成するアミロースやアミロペクチンの鎖が分子間の水素結合によって凝集して、アミラーゼが作用しにくくなることで、小腸での消化・吸収に対して抵抗性を示します。


(4)レジスタントスターチ4(RS4)

(性質)酵素的、物理的、化学的な処理を施したデンプン(加工デンプン)
(食品例)スナック菓子、パン、冷凍食品、麺類、タレ、ドレッシングなどの加工食品
(生理機能)デンプンの物性改良のために置換基を付けたり、分子間が架橋されているので、アミラーゼの作用を受けにくくなります。そのため、デンプンの分解が抑制され、肥満防止、腸内環境改善、血糖上昇抑制、脂質代謝改善などの効果が報告されています。