栄養学
2022.9.22
第2回 レジスタントスターチと食物繊維との違い

監修:福山大学教授 井ノ内直良先生


前回のコラムでは、レジスタントスターチとは何か、レジスタントスターチの分類についてお話ししました。レジスタントスターチは小腸で分解されない難消化性成分です。しかし、難消化性成分と聞くと、食物繊維のイメージが強いと思います。レジスタントスターチは、私たちにも馴染みがある食物繊維と、どのように違うのでしょうか?

食物繊維とは・・・


ここではルミナコイド(*)と呼ぶ分類法で説明しますが、食物繊維の定義はさまざまです。例えば、日本食品標準成分表 2020年版では、酵素-重量法(プロスキー変法又はプロスキー法)、又は、酵素-重量法・液体クロマトグラフ法(AOAC.2011.25法)で測定される食物繊維総量と定義されています。また、食品表示法では、プロスキー法又は高速液体クロマトグラフ法で測定されるとされています。そのため、レジスタントスターチは測定方法によっては食物繊維として測定されることもありますが、ここではルミナコイドの食物繊維とレジスタントスターチをわける分類に従います。


*ルミナコイド:日本食物繊維学会が提唱している、食物繊維をはじめとする難消化性機能成分を包括する造語で、ヒトの小腸内で消化・吸収されにくく、消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食物成分のこと。

①成分が違う

食物繊維とレジスタントスターチは、構成成分が違います。どちらもブドウ糖が多数結合した多糖類が主な成分ですが、レジスタントスターチは、α-1,4結合構造の「アミロース」とα-1,6結合で枝分かれする構造を含む「アミロペクチン」を基本骨格とする「デンプン性」で、一方の食物繊維は別の結合構造などからなる「非デンプン性」となります。

食品中の難消化性成分を、この2つに大別し、それぞれを併せてルミナコイドと呼びます。

②生理的機能が違う

次に、機能について見ていきましょう。大腸に達したデンプン性の難消化性成分(レジスタントスターチ)は、腸内細菌によって酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸、水素やメタンなどのガスへと変換されます。このように、小腸では消化されず、大腸で腸内細菌により分解されるという点においては、レジスタントスターチは食物繊維とよく似た性質を持っています。では、それぞれの機能性についてもう少し具体的に見ていきましょう。

食物繊維はグルコマンナンやイヌリンのような水溶性食物繊維と、セルロースやキチンのような不溶性食物繊維に分類されます。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の機能性については研究が進んでいて、下の表に示すようにそれぞれ異なる生理機能を持つことがわかってきました。一方、レジスタントスターチは水溶性食物繊維が持つ生理的機能(腸内環境改善、血中脂質低下作用など)と、不溶性食物繊維が持つ生理的機能(排便促進作用)の両方を持つことが報告されています。つまり、レジスタントスターチは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方の良いとこ取りをしたような機能を持つのです。