第1回のコラムでは「食後血糖値」と「食べる順番」の関係を紹介しました。今回は「食べる時刻」が食後血糖値や私たちの健康に与える影響をお話したいと思います。
人間は昼間活動する動物で、体の時計遺伝子が1日のリズムを制御しています。ヒトの時計遺伝子に大きな影響をあたえるのが食事です。特に、朝食は体内時計のスイッチとして大変重要です。朝食抜きの生活が続くと体内時計が乱れ、肥満や生活習慣病のリスクが高まります。また、疫学研究では、夕食の時刻が遅い人は肥満や糖尿病になるリスクが高いことが報告されています。
しかし、日本では男性の20~40歳代の30%以上、女性の20歳代の25%が午後9時以降に夕食を食べています。男女とも勤労世代では遅い時刻に夕食をとらざるを得ない状況にあるといえます。仕事や通勤の関係で18時や19時に夕食を食べることができない場合にはどうすればいいのでしょうか?
私たちは日常生活に応用できるように2型糖尿病患者さんを対象に次の介入実験を行いました。1-3)
この結果から、同じ人が同じ食事をとっても食べる時刻が異なると、血糖値とインスリンは影響を受けることが明らかになりました。健康な若い人も糖尿病の方も夜遅い時刻に食事をとると血糖値もインスリンも上昇しました。インスリンは血糖を下げる大切なホルモンですが、インスリンによって血液中の糖は細胞内に取り込まれ、脂肪として蓄積されます。したがって、インスリンがたくさん分泌されると太りやすくなってしまいます。
また日本人をはじめとする東アジア人はもともとインスリンの分泌能力が欧米人の半分くらいしかなく、さらに加齢とともにインスリンの分泌能力は低下していくため、インスリンを節約することが大切なのです。
私たちの研究結果をもとに、食後血糖値を上げ過ぎないためのおすすめの食べる時刻を紹介します。
夕食が遅くなりそうなときは2回に分けて、炭水化物は早い時刻に
遅い時刻に食事をするときには、夕方18時か19時頃に野菜(野菜ジュースでもよい)と炭水化物(おにぎりやサンドイッチ)を食べ、遅い時刻には野菜とおかず(たんぱく質)を食べるように、2回に分けて食べると血糖値の上昇とインスリンの分泌がおさえられます。夕食を2回に分けることで、インスリンの効き目を弱める遊離脂肪酸が下がり、さらにセカンドミール効果*で、2回目の食事の時にはインスリンの効き目がよくなるためです。この時に大事なのは、炭水化物は必ず1回目の早い時刻に食べ、2回目の遅い時刻には食べないことです。
*セカンドミール効果:1回目の食事により膵臓のβ細胞の応答が高められ、2回目の食事の際にインスリンが速やかに分泌され、血糖値の上昇が抑えられる。
おやつは3時がいい
おいしいスイーツを楽しみにしておられる方も多いと思います。私たちの研究により、おやつは昼食と夕食のちょうど真ん中の3時から4時が一番血糖変動に影響を与えにくいことがわかりました。4,5) 食後すぐに食べると血糖値のピークが高くなってしまいます。特に夕食後のスイーツは血糖値が急上昇し、夜間ずっと高いままで翌日の朝食後も血糖値が上がりやすくなりますので避けた方がよいでしょう。6)
参考文献