村上祥子、80歳。現役の料理研究家です。「村上さんは実は3人おりまして、1人は東京、1人は福岡、皆さんの前に立っているのがもう1人」。全国各地で精力的に仕事をこなす私を、講演会の主催者が紹介したときの言葉です。
ひざ痛もなし、腰痛もなし、年齢を重ねても筋肉量は多いらしいです。人生ずーっと元気で、気力も衰えることがありません。私のパワフルな日常を支えているのは、誰も見ていなくても部屋をきれいに保ち、三食作って食べること。人生最後の日まで好きなことをしていくためには、その繰り返しこそが大切と思っています。
それを助けてくれているのが「電子レンジ」。単純な調理器具ですが、押さえるべきツボがあります。これからお話ししていきますね。
はじめに、電子レンジの原理について少しお話したいと思います。
電子レンジは、食品の持っている水分を、電磁波が揺り動かして加熱する調理器具です。電磁波という言葉に不気味な感じを受けますが、電磁波は空間を伝わる太陽光や電波などの総称で、テレビもスマホもラジオも、空を飛んでくる電磁波を利用したものです。タクシーの無線もJRや地下鉄の自動改札機も電磁波です。
電磁波は空気を波のような形で伝わり、その山から山、谷から谷までの距離を波長と呼びます。電子レンジに使われる電磁波の波長は約13㎝で、テレビやラジオの電磁波は更に波長の長い電磁波が使われています。電磁波は電子レンジをはじめ、私たちの生活に深く関わり、私たちの生活をより便利にしてくれています。
電子レンジ調理のメリットを紹介します。電子レンジは単に温めるだけでなく、調理に使う上でたくさんのメリットがあります。
電子レンジ調理のメリット
①効率よく加熱するので、調理時間が短くてすむ
電子レンジは電磁波で食材の水分子を揺り動かし、効率よく調理します。このため、調理時間が短縮されます。100gあたり、600Wでわずか2分の加熱で大丈夫。また、電子レンジは火を使わないので、消し忘れの心配もなく、安全です。うっかりが増える年代には特におすすめです。
②油は風味づけ程度で十分。無理なく量が減らせる!
電子レンジは食材の水分で調理するので、炒めものも油分は控えめでも焦げつきません。炒めもの、揚げものも油の使用量は風味づけ程度*1。油の摂りすぎが気になる方にも油控えめで調理できる電子レンジは強い味方です。中華風のメニューも自在に作れます。
③食材の水分で調理するから、調味料はいつもの2/3
電子レンジは食材に含まれる水分で調理ができるので、加える調味料もいつもの2/3ですみます*1。食材の水分を揺り動かして加熱調理するので、食材の栄養やうま味を逃しません。
④電子レンジ対応の耐熱容器一つで調理できるから、後片付けが簡単!
電子レンジ対応の耐熱ボウルか耐熱皿(食材の形状に合わせて)が一つあれば調理ができます。使う道具が少ないので、後片付けがラクラクです。噴きこぼれなければ、電子レンジ対応の食器でレンチンしてそのまま食卓に出せるので、洗いものも減ります。
電子レンジで調理すると栄養はどうなるの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、電子レンジ調理は栄養的にもメリットがあります。
電子レンジは、ゆでる、蒸す、煮る、煮込む、焼く、ソテー、揚げるなどの調理が油を使わずにできるので、低カロリーな調理方法です。ソテーや揚げる調理では、油を全く加えないと風味が欠けるのでほんの気持ちだけ加えますが、フライパンや中華鍋を使った料理に比べればぐっとカロリーは低めになります。
また、ゆでる、蒸す、煮る調理と比べても、レンジ料理は食材の持つ水分+調味料で仕上げますから、鍋を使ったときより栄養成分が多く残ります。あるTV番組で、食材も調味料も同じ条件の「肉じゃが」を電子レンジと鍋で作って、食品分析センターに依頼したことがありますが、電子レンジで作った「肉じゃが」は鍋の「肉じゃが」より、アミノ酸もビタミンも30%多く残っていました。
栄養分が減らないということは、アクも残るということですから、青菜をチンした後は即、水に取って冷まして絞り、アクを除いておひたしなどに仕上げるのがポイントです。