雑穀には、第2回コラムでも紹介したように、日本人に不足しがちな栄養素である、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、葉酸などを豊富に含むものもあり(表1)、骨の健康、血液の形成、脳機能、免疫システムなどに関係する栄養バランスの改善に役立つことが期待されています。
また、アマランサスやキヌアは穀物に不足しがちな必須(不可欠)アミノ酸であるリシンを多く含んでいるので(表2)、リシンが少ない米と一緒に炊いたり、小麦粉に混ぜて使ったりすることでアミノ酸を補完することができます。
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)を加工して作成
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出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)を加工して作成
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雑穀には、食物繊維や難消化性デンプン(レジスタントスターチ)、抗酸化物質(ポリフェノール、サポニンなど)が多く含まれていて、生活習慣病の予防に役立つ食品としても注目されています。
食物繊維や難消化性デンプンは腸内環境を改善して腸の健康をサポートし、また食べると満腹感が得られるため食べ過ぎ防止も期待できます。抗酸化物質は炎症を軽減し、細胞を酸化から保護する働きがあります。
ただし、一部の雑穀を摂りすぎてしまうと生体中のバランスを崩す可能性もあるため、一つの食品に頼るのではなく、バランスよく色々な食品と組み合わせて食べることが大切です。
雑穀は白米・小麦粉の置き換えやサラダのトッピングなど、普段の料理にも活用しやすい食材です。雑穀を炊く時や、小麦粉の代わりに使う時のポイントを紹介します。
雑穀を炊く時
①洗浄 粒が小さいものは、洗浄には目の細かい茶こしなどを使うと便利です。
②加水 重量に対して約1.3~2.0倍を目安として、好みに合わせて調整ができます。
③浸水 30分~1時間が目安です。モロコシなどの粒が大きいものは、浸水時間を長めにします。
④炊飯 通常の炊飯器で炊くことができます。また、湯とり法(熱湯に入れてやわらかくなったら湯を捨てて蒸らす方法でインディカ米やタイ米などに使う)でも炊くことができます。白米と雑穀を一緒に炊く場合は、10%程度の雑穀で置き換えると良いでしょう。
*市販の商品でパッケージに使用方法や加水量などが記載されている場合はそちらに従ってください。
小麦粉の代わりに使う時
雑穀を粉にしたものは、パン、菓子、うどん、パスタ、ホワイトソース(ベシャメルソース)のルウ、天ぷらの衣などにも使うことができます。パンに使う場合は、雑穀の種類によって風味だけでなく、食感やボリュームなども変わります(1)(2)。パンへの添加量は小麦粉(強力粉)の5~10%を雑穀粉で置き換えることを目安とし、ボリュームが若干減っても雑穀らしいパンを作りたい場合は、20%程度の雑穀粉で置き換えても良いでしょう。
その他の活用方法
他にも各雑穀を約3倍の水で10~15分間茹でてサラダのトッピングにしたり、もち種のアワ、キビ、モロコシを蒸しておこわにしたり、菓子類に使ったり、パフやシリアルに加工することもできます。雑穀を食生活に取り入れて、栄養バランスの改善を目指してみましょう。
(参考)
(1) 伊藤 幸, 平尾 和子, 濱西 知子, 松永 直子, 高橋 節子. ヒエ (Panicum crus-galli L., var. frumentaceum HOOK. f.) 粉およびシルクフィブロインの添加が食パンの物性ならびに食味特性に及ぼす影響. 日本家政学会誌, 57, 89-99(2006).
(2) 手塚尚子, 平尾和子, 濱西知子, 松永直子, 高橋節子. アワの調理科学的研究(第3報)アワ(Setaria italica Beauv.)粉を置換した食パンの物性ならびに食味特性. 共立女子大学家政学部紀要, 54, 85-93(2008).