豆と栄養
2023.4.5
第1回 豆類の分類と栄養

監修:神戸女子大学教授 木村万里子先生

豆類の分類と栄養

豆類の分類

豆類は、形状や含まれている栄養素の違いにより、2つに大別されます。まず1つは、高脂肪で油の原料となる大豆や落花生などのグループです。もう1つは、いんげん豆、えんどう、レンズ豆などの“雑豆”と称される低脂肪のグループで、形状によりさらに3つに分類されています(図1)。

図1 欧米における豆類の分類図

豆類のグループ

出典:新豆類百科、公益財団法人日本豆類協会(2018)を加工して作成

豆類の写真


日本での豆類の摂取状況

日本で最もよく食べられている豆類は大豆ですが、大豆の主要生産国であるアメリカやブラジルでは、ほとんどが油糧・バイオ燃料の原料・家畜飼料として消費されており、国によって大きな違いがあります。

日本には、古くから豆腐、納豆、醤油および味噌などの大豆加工食品を日常的に食べる食文化があります。国民一人当たりの乾燥豆当たりの大豆供給量は約20gで、豆腐や納豆などの大豆加工食品も含めた大豆摂取量は一日平均約60gとなっております。日本人は、世界と比較しても大豆を多く食べていることがわかります。(表1)

表1 世界の食用大豆供給量(乾燥豆当たり)トップ10

世界の食用大豆供給量(乾燥豆当たり)トップ10

出典:FAO, FAOstat(accessed 2022.12.28).を加工して作成
https://www.fao.org/faostat/en/#data/

一方、雑豆類は、高たんぱく質・高食物繊維の優れた健康食材であるにもかかわらず、日本での摂取量は50年ほど一日平均約1~2gと大変低いままです(図2)。日本で大豆と雑豆の摂取量に隔たりがある理由として、雑豆の栄養的価値が十分認識されていないこと、雑豆加工食品の種類が少ないこと、そして料理方法が知られていないことなどが考えられます。

図2 日本における豆類摂取量の推移(大豆 vs. 雑豆)

日本における豆類摂取量の推移

※平成13年(2001年)以降、味噌が「豆類」から「調味料・香辛料類」に分類されるようになった。
出典:厚生労働省 国民健康・栄養調査(1968年~2019年)を加工して作成


豆類の栄養

図3に、大豆と雑豆類の栄養成分組成を示します。たんぱく質含有量は、大豆が約34%、雑豆類は約17~26%とどちらも多く、両者とも優れた植物性たんぱく質源です。脂質は、大豆が約20%と多いのに対し、雑豆は約2~5%と低脂肪です。炭水化物については、雑豆類は利用可能炭水化物(糖質)が多いですが、これらの一部は調理加工などにより消化されにくい難消化性デンプン(レジスタントスターチ)に変化することが知られています。また、食物繊維はどの豆類も豊富で、特にべにばないんげんやあずきに多く含まれており、いずれも食物繊維の良い供給源といえます。

図3 たんぱく質、脂質、利用可能炭水化物および食物繊維の含量(大豆 vs. 雑豆)

たんぱく質、脂質、利用可能炭水化物および食物繊維の含量

出典:日本食品標準成分表2020 年版(八訂)を加工して作成

 
大豆イソフラボンについて
大豆に含まれる「大豆イソフラボン」は女性ホルモン(エストロゲン)と構造や作用が似た成分です。国の安全衛生委員会によって、大豆イソフラボンを関与成分とする特定保健用食品において摂取量の上限値が決められています。
日本人は大豆食品をたくさん食べているけれども大丈夫?と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。日本人は昔から豆腐、納豆、みそなど大豆食品を食べていますが、大豆イソフラボンの健康への有害な影響は現時点では確認されていません。大豆食品は良質のたんぱく質源であるだけでなく、カルシウム等にも富む重要な栄養源でもあり、食生活の中で他の食品とともにバランスよく食べることが勧められています。