私たちの食生活でよく耳にする食物繊維ですが、どういったものを指しているのでしょうか。
実は、食物繊維の定義はさまざまで、日本でもいくつかの定義があります(表1)。例えば、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)では、「ヒトの消化酵素で消化できない難消化性炭水化物」としていますし、文部科学省の日本食品標準成分表2020年版(八訂)では「ヒトの消化酵素で消化されない食品の難消化性成分の総体」と定義されています。
食物繊維は、水に溶けるかどうかで水溶性食物繊維、不溶性食物繊維に分類され、それぞれ異なる生理機能を持つことが知られています。
水溶性食物繊維:腸内環境の改善、血中コレステロール・中性脂肪低下、血糖上昇の抑制
不溶性食物繊維:便のカサを増やして排便を促進する、食品の腸内通過時間の短縮
また、食物繊維は生活習慣病予防との関係も報告されていることから、日本人の食事摂取基準(2020年版)で目標量が設定されている栄養素です。
(18歳~64歳の食物繊維の目標量 男性21g/日以上、女性18g/日以上)
では、私たちの食物繊維の摂取状況はどうなっているでしょうか。
日本人男女における食物繊維の平均摂取量は、1955年の調査では22.5g/日でしたが、2018年の調査では15.0g/日まで減少しています(図1)。1、2)
食品別の食物繊維摂取量を見てみると穀類からの食物繊維摂取量が減っていることが分かります。1955年の総食物繊維摂取量に対する穀類摂取量が占める比率は44%でしたが、2018年では20%まで減少しました。これは、食生活の欧米化に加えて、炭水化物への思い込みによってご飯やパン類を避ける穀物離れも一因と考えられます。
しかし、図1からも分かるように、ご飯やパンなどの穀類は、日本人にとって食物繊維の寄与率が高い食品です。日本人の食生活において、食物繊維をしっかり摂取するためには、穀類の摂取が重要です。かつての水準まで食物繊維の摂取量を戻すためには、穀類の摂取量を増やすことが一つの方法と言えます。
文部科学省は、私たちが日常的によく使う食品の標準的な栄養素の成分値を「日本食品標準成分表」として公表しています。食物繊維については、今までプロスキー変法(藻類のみプロスキー法)という方法で測定した値が公表されていましたが、この方法では食物繊維と定義される一部の難消化性成分を測定できないといった課題がありました。
そこで、日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年からは、新たな食物繊維の測定方法として、AOAC2011.25法が追加され、今まで測定できなかった低分子量水溶性食物繊維と難消化性でん粉全量が測定できるようになりました(表2)。
従来の方法では、全粒小麦(玄穀)における食物繊維の大部分は、不溶性食物繊維として測定されていて、健康との関係も便通の改善が主体と考えられてきました。しかし、新しい分析法によって、全粒小麦には、大麦と同様に水溶性食物繊維も含まれることが明らかになりました(図2)。今後さらに全粒粉と健康との関係がわかってくるかもしれません。
参考文献