スポーツ栄養学は、近年、競技選手や選手を支える人など、様々な人々から注目されています。それでは、運動選手は何か特別な食べ物を食べているかというと、そうでもありません。メニューとしては、一般的な料理や食材を食べています。それでは、一般の人との違いはどこにあるのでしょうか?
まずは、それぞれの競技特性に応じたエネルギー量の摂取が求められます。その次の要素としては、各栄養素の量、質、タイミングが挙げられます。例えば、審美系の新体操選手や持久系の長距離ランナーなどは、細身の体型を維持することで競技の美しさや競技力の向上を目指しがちです。身体を絞り込むようにと監督から言われると、運動量を増やすよりも食事を減らしがちであり、その事で体調を崩す選手が少なくありません。体調不良が進行すると、摂食障害に陥って食事が食べられなくなったり、貧血になったり、生理が止まったりする事があります。生理が止まると、女性ホルモンの一つであるエストロジェンが分泌されなくなります。エストロジェンは女性の骨の形成や筋肉の合成にも関与しています。女性は閉経を迎えるとエストロジェンが分泌されなくなり、骨密度の低下が進み、骨粗しょう症になりやすくなります。骨形成のピークは20歳ぐらいであり(図1)、この頃までには食事をしっかりとり、運動で負荷をかける事で骨をしっかりつくり、鍛えておく必要があります。そのため、成長期に無理な食事制限をして痩身を目指すことはとても危険な事であり、注意が必要です。
出典:Rozenberg S. et al. “How to manage osteoporosis before the age of 50.” Maturitas 138, 14-25, 2020.
骨はカルシウムが多い組織ですが、骨の形成のためにはエネルギー量の確保が必要であり、炭水化物、たんぱく質、脂質の摂取も必要です。また、カルシウムの吸収には活性型ビタミンDやたんぱく質が必要です。さらに、エネルギーの産生にはビタミンB群が必要であり、ビタミンCはコラーゲンの生成に寄与します。ミネラルのうちマグネシウムやリンも骨の形成に関与しています。骨の形成ひとつとっても、様々な栄養素が複雑に関わりあっているのです。そのため、まずは運動量に見合ったバランスの良い食事をとる事が重要です。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を基に作成