この日、滝宮小学校は「弁当の日」を迎えていました。そこで3時間目の、食育の時間に先駆けて、みなさんの作ってきたお弁当と、発表を見学させていただきました。

 


「弁当の日」のみなさんの発表を、見させていただきました。

この日、滝宮小学校は「弁当の日」を迎えていました。「弁当の日」とは、子ども達が自分の力だけで献立から食材の買い出し、調理までを全て行って弁当を作る日のこと。 今では全国の学校で実践されている食育運動ですが、滝宮小学校は「弁当の日」発祥の地として全国的に知られています。 2003年には農林水産省の「地域に根ざした食育コンクール」で最優秀賞も授賞した「弁当の日」は、2001年にスタートして以来、毎年小学5年生で3回、6年生で4回実施するのが伝統となっています。

朝一番、6年生が登校すると全員の弁当が教室にズラリと並べられました。お披露目が終わると、今度は1人1人がみんなの前で弁当のテーマやこだわり、苦労した点などを、写真を見せながら発表します。 さすが「弁当の日」が生まれた学校、どれも個性豊かな弁当たちばかりで、子ども同士で「どうやって作るの?」「これ、かわいい!」などと会話が飛び交います。

食育の時間を担当しているスポーツ栄養士のこばたてるみさんも、朝からみんなの弁当と発表の様子を見学。3時間目は、この「弁当の日」のお話からスタートしました。


弁当づくりに大切な栄養とバランス

授業は5・6年生の子ども達と保護者の方々を対象に、為末先生との対談形式で進められました。「お弁当はほとんど作ったことがない」という為末先生、 スクリーンに子ども達の特製弁当が登場すると、その力作ぶりに興味津々。「みなさん、とにかくすばらしい。 なかにはデザートのプリンまでついているお弁当もありましたし、がっつり系もすごかったですね」とこばたさんがテーマ別に解説すると「かわいいお弁当ですね」「うなぎ! 本当にがっつりだ 」と為末先生も感心しきり。

「こんなすごいお弁当を作っている子ども達なので、為末さんはじめ、いろんなアスリートがどんな食事を摂っているかということに興味があると思います。 やはりトップ選手は食べ方が上手い。そしてよく食べます。では実際に選手たちがどんなものを食べているのか、紹介していきましょう」 Jリーグの清水エスパルスやオリンピック選手など、世界の第一線で活躍するアスリートを栄養面でサポートしてきたこばたさん。 エスパルスの選手が摂ったある日の食事や、ラグビー選手、モータースポーツ選手のメニューなど、実際に選手が食べている食事を写真で紹介しながら、強い選手がいかにバランスのよい食事を摂っているかを解説しました。 為末先生も「現役時代はバイキングが多かったのですが、どうしても好きなものに偏ってしまうので、野菜や果物などを意識して食べるようにしていた」と言います。

ここで「苦手な食べ物がある人、手を挙げて!」とこばたさんが問いかけると、子ども達からたくさんの手が。同年代の子ども達を対象に行われたアンケート調査でも、 4人に1人が苦手な食べ物があると解答したそうですが「そういう子たちは風邪をひきやすかったり、授業に集中できないことがあると答えています。為末先生の授業で習ったように、チャレンジって大切なこと。 ぜひ1口でいいからチャレンジしてみてくださいね」とこばたさん。為末先生も「食べ方を変えると苦手なものも意外と食べられたりするので、試してみてください」と子ども達にエールを贈ります。 では、子ども達は1日にどれだけのエネルギーを摂取すればいいかと言えば、12〜14歳の男子が2,200〜2,750kcal、女子が2,000〜2,550kcalとされています。この数値をわかりやすく捉えるために、こばたさんが弁当箱を使って説明しました。

「たとえば男子は1日に2,500kcal必要だとすると、3で割れば1食あたり約800kcal。みんな、弁当箱の裏を見たことがあるかな? そこに何mlと書いてあるのか知っている?  自分の1食分と同じ数字かどうか、あとで確かめてみてください。その数字が目安です」

また、弁当のメニューについては「ごはんと大好きなお肉や卵など、主菜ばかり入っているお弁当も多かったようです。メニューのバランスは一般的には、主食が3、副菜が 2、主菜が1の割合が推奨されていますが、 成長期のお子様の場合には、45%が主食、25%を主菜、残りの30%を副菜という風に考えるといいと思います。普段よく運動しているお友達は、さらに乳製品と果物も毎食つけると栄養バランスがとれます」とアドバイスしました。

子ども達が気になる身長については「身長を伸ばすには牛乳を飲めばいいですか? とよく聞かれるのですが、これは半分正解で半分まちがい」とこばたさん。 身長を伸ばすには牛乳に含まれるカルシウムだけでなく、タンパク質も不可欠で、タンパク質の摂取量が少ないと身長の伸びが鈍くなるといいます。 「今朝起きてパンやおにぎりしか食べてこなかった人はいないかな? タンパク質が少ないので、背が大きくなりたい人は卵や納豆、焼き魚や牛乳なども一緒に摂りましょうね」

腹は減っても、はっても戦はできぬ!?

いろいろなものをバランスよく食べることは、カラダの中でエネルギーを作るため。その仕組みを、こばたさんはたき火にたとえて解説しました。
「たき火は、薪があるだけじゃ火はおきなくて、新聞紙にマッチで火をつけて、うちわであおいでようやく薪が燃えますね。それと同じことが、みんなのカラダの中でもおこっているんです。 薪は体脂肪。新聞紙はごはんやパスタ、パンなどの糖質。マッチはビタミンB1。ブタミンと覚えてほしいんですが、豚肉にたくさん含まれる栄養素です。 ビタミンB1を摂らないと、せっかく燃料の薪や新聞紙があっても火はつかず、エネルギーにならないんですね。それから、うちわの役目をするのがビタミンB2。 お弁当にうなぎを入れてきたお友達がいましたが、うなぎはビタミンB1もB2も入っていて栄養バランスがとてもいいんです。さらにネギやニンニクなどを加えると、マッチがライターに変わるので、ぜひ加えてくださいね」
おすすめメニューとして、納豆にネギと卵を入れた納豆たまごかけご飯や、麻婆豆腐などが挙げられました。

普段の食事がわかったところで、試合前や試験前など、子ども達の勝負時におすすめの食事とは何でしょう? そこで、こばたさんがひとこと。「腹が減ってもはっても戦はできぬ、と覚えてください」
塾や運動など、夕方から習い事がある子どもは多いですが、何も食べずにいると空腹すぎて集中力が落ちてしまいがち。一方で、お腹がいっぱいになりすぎても集中力は落ちてしまいます。 そこで、どんなものを食べると集中力が増すのか、コンビニのおにぎりを使ってクイズが出題されました。野沢菜、明太子、鶏五目、焼きおにぎり、昆布、牛すき、チキン辛子マヨ、おかかのおにぎりの中から、 運動前に食べたほうがいいものと、運動後に食べたほうがいいものを子ども達に選んでもらいました。
「運動前に食べ過ぎると走れなくなるので、消化が速く運動中のエネルギーになりやすいものを食べるといいですね。野沢菜や昆布、焼きおにぎりなどです。逆に運動後は筋肉が傷ついていますから、 傷を治してくれるタンパク質と、運動で使ったエネルギーの補給が大切。鶏五目や牛すきなどですね。イメージとして、運動前はあんまん、 運動後は肉まんと覚えましょう」

最後に中塚校長先生が「今日みなさんは世界一の授業を受けることができました。今日学んだことは、必ずみなさんの助けになるはずです。 チャレンジすることを忘れずに、ぜひこれからの生活に活かしてほしいと思います」と子ども達にお話され、爲末大学食育学部はすべて終了となりました。


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