「1つめは、こんなことを言ったらみんなにバカにされないかな、という心配は一切忘れて、自分の思っていることを話してみてください。2つめは、少数派になること。みんなと違う夢ほどいい、という感じで考えてみてください。3つめは、人にどんどん質問してください。夢がまだない時は、じゃあ好きな物は何? という感じでお互いに質問しあってください」
話し合いの前に、みんなが考えてきた夢について発表してもらいました。為末先生が「発表してくれる人!」とつのると、あちこちから手が挙がりました。
「年少からサッカーをやっているので、将来はサッカー選手になりたいです」
「ケーキ職人になって、みんながおいしいと言ってくれるケーキを作りたいです」
「お父さんがサッカー選手なので、僕もサッカー選手になって日の丸を背負って戦いたい」
「野口英世さんの伝記を読んで、お医者さんになりたいと思いました」
「野球選手になりたいです。プロ野球を見に行った時に、外野の選手が目の前でファインプレーをするのを見て感動したので」
「テレビで錦織選手の試合を見て、テニス選手になりたいと思いました」
「介護福祉士になって、年配の方たちの役に立ちたいです」
10人ほどの児童がそれぞれの夢と、なぜそれが夢になったかという理由をしっかりと発表。為末先生が「どんなケーキを作りたい?」 「野口英世の伝記を読んでどう思いましたか?」「プロ選手になったらどんなプレイをしたい?」と1人ひとりに質問しても、「明るい色のケーキを作りたいです」 「カラダをはって相手のボールを取りに行きたい」とハキハキと答えているのが印象的でした。
千早小の6年生はスポーツ選手志望の児童が多いようですが、「ユーチューバ―になりたい人はいる? 学校の先生は? ゲームクリエイターはいない?」 と為末先生が小学生に人気の職業を聞くと、やはり手を挙げる子がちらほら見受けられました。
みんなの発表が終わったところで、今度は夢を実現するまでの「夢のストーリー」を考えていきます。為末先生からストーリー作りについて 「①何歳までにホームランを何本打つ、など具体的な数字を盛り込んでください。②夢をかなえた時に、誰がどんな風に喜んでいるかを考えてください。 ③個性的でいいので、できるだけ大きな話を書いてください。夢がまだ見つからない人も、ぼんやりでいいから将来こうなりたいな、こんなところに住んでみたいな、というようなことを考えてみて」とポイントが伝えられました。
4~5人のグループに分かれ、さっそく話し合いスタート。小学校卒業間近の子どもたちということもあってか、あらかじめ夢について考えてきていた様子。 話し合いについても、はじめから活発に質問や意見が飛び交っていました。そこに為末先生が各グループの輪の中に入り、積極的に子どもたちの会話に加わっていきます。
「高校1年生の時には何をやっているかな?」「25歳の時はどうしてる?」と為末先生が子どもたちのシートを見ながら質問を投げかけましたが、 すぐに答えが思いつく子もいれば、「意外とむずかしいな」と考え込む子も。それでも千早小の子どもたちは発想力が豊かな児童が多いようで、 「80歳か。その頃はどんな時代になっているんだろうね」と為末先生も子どもたちとの会話がはずんだようです。
話し合いが盛り上がったところで、子どもたちそれぞれが話し合いの中でまとめた「夢のストーリー」を発表してもらいました。
「僕は23歳の時にサッカー日本代表になって、ワールドカップで日本をベスト4に導き、その功績が認められて24歳でユベントスに移籍。26歳でバルセロナに移籍して、37歳で引退して、その後は監督になって日本をワールドカップで優勝させたいです」
「合唱コンクールで中1、中3で優勝して、香住丘高校で文系の専門に入り、英語の勉強をして英語が話せるようになって、留学してさらに英語力を磨き、歌の気持ちがわかるようになって、さまざまなジャンルの歌が歌える歌手として活躍したいです」
「17歳でサッカー選手になって、19歳で海外のサッカー選手になって、24歳でワールドカップに出てバルサに入り、25~28歳で世界一のサッカー選手になって、29歳でクラブワールドカップを優勝、30歳でワールドカップの通算得点王になって、35歳で引退して40歳で世界一の監督になって、世界中が喜んでくれます」
「私の夢は助産師です。中学校を卒業したら看護専門学校に入学して、22歳で大きな病院に就職して助産師として生命の誕生に立ち会いたいです」
「中学を卒業して、高校2年生くらいからユーチューバ―になってゲーム実況をして、ユーチューブを観てくれる人が笑ってくれたらいいなと思います。番組名はマイチャンネルです」
「30歳になったらおいしいケーキを作って、家族と幸せに暮らしていきたいです。作ってみたいケーキはフルーツたっぷり健康ケーキです。それを食べておいしいと言われたら嬉しいです」
子どもたちからは年齢まで細かく考えられたストーリーが発表されましたが、「私はまだ夢が決まっていないので、12歳の誕生日までに夢を見つけて、中学校で学年10位以内に入って本命の高校に入学した後、どこかいい大学に入って人を助けられるような仕事をしたいです」という子など、まだ夢がわからないという児童もストーリーをしっかり考えていました。
また今回は自薦のほかに他薦による発表コーナーも設けられ、「24歳からスーパーラグビーの10番になって活躍し、34歳で引退してその後は幸せに暮らし、地元かしいヤングラガーズのコーチになってラグビーを教えたい」という子や、「中3で野球部のレギュラーになって、高校で活躍してドラフト1位で巨人かソフトバンクに入り、2年目で首位打者になり、10年目でトリプルスリーを達成し、80歳でメジャーに挑戦して、100歳で3375号ホームランを打ち、170歳で引退したいです」という壮大な夢も登場し、会場は大いに盛り上がりました。
最後に為末先生からメッセージが贈られました。
「これからみんなに考えてほしいなと思うのは、夢の奥にあるもの。たとえば夢をかなえることで家族はどう思っているのか、どういう人が喜んでいるのか、そこが見えてくるとサッカーから行っても、 野球から行っても、ケーキから行っても、同じところへたどりつけるんじゃないかと思うんですよね。これからもぜひそういう夢の奥にあるものを意識しながらがんばっていってください。
それともうひとつ、友達と夢の話をした時に、そんな夢絶対かなわないよ、と言われるのと、その夢面白いからがんばって、と言われるのでは、 その人の人生が大きく変わってきます。ですから友達の夢を聞いたら、ぜひ応援してあげてください。そうすれば、1つ2つだった夢が、20にも30にも増えていくはず。ぜひお互いの夢を応援しあってください」 と、新しい門出を迎える6年生にエールを贈り、2時間目の授業は終了しました。