校長先生、ご担当いただいた先生、そして為末先生にも本日の感想をうかがいしました。


受講のきっかけ

為末大さんという世界で活躍していたトップアスリートから、成功の秘訣を1つでもつかんでもらえたらいいなと思っておりました。 子どもたちにとってはめったにない貴重な経験になると思いますし、ハードルの授業もしていただけるということでしたので、プロのハードルをみんなの前で見せていただけたらいいなという期待もこめて、 本日の授業を楽しみにしておりました。
(教頭談)


松江市立川津小学校  古川 康德 校長

県教委からこのお話をいただいたとき、迷わず引き受けることにしました。それは、日頃から、「子どもたちに本物体験をさせてやりたい」と考えていたからです。 しかも、その講師があの為末 大選手だったので迷うはずもありません。現役時代のインタビューを聞いたりして、ものすごく理論的で頭のいい方だなと思っていました。 引退後も、TV等で見る為末選手の言動は、どこかストイックで哲学的な雰囲気があり、どんな方かな、と思っていました。ですから、当日をとても楽しみにしていました。 ところが、当日、どうしても抜けられない会議があり、お会いすることはできませんでした。
しかし、子どもたちの夢のストーリーやTVなどで報道された内容、先生方の感想等から、子どもたちが生き生きと活動し、大きな影響を受けたことが分かりました。
例えば、夢を語ることは簡単ですが、それを実現するとなると、そうたやすいことではありません。 しかし、為末先生がおっしゃるように、そのプロセスを一つずつ踏んでいけば、現実のものとなるかもしれません。 子どもたちが、その手がかりを手に入れたとしたら、それはとても大きな意味があると思います。

「私の夢が叶って誰が喜ぶか考えたり将来の自分を想像したりするのが、楽しかったです。」

「ぼくは、まずハードルの時間にいいことを学びました。それは速く走るコツです。その走り方をバスケットで実践してみたいです。 そして、食事についてもやってみたいことがあります。それは、運動前は甘いものを食べ、運動後はお肉やお米を食べるといいと聞いたので、やってみたいです。 特に運動後に食べると、疲労回復や筋肉がつくのでやってみたいです。」

『感動が人を動かし、出会いが人を変える』という言葉があります。今回の為末、こばた両先生との出会いが、子どもたちの行動に影響を与え、 将来をより明るく照らすとしたら、私としては、これ以上の喜びはありません。


松江市立川津小学校 福島 稔夫 教頭

為末先生が子どもたちに入りやすい雰囲気を醸し出してくださったので、今日は参加している子どもたちが伸び伸びといろんなことに挑戦できたと思います。 ハードルが苦手な子も中にはいたと思いますが、子どもたち自身が「ハードルを跳びたい」という気持ちになり、楽しそうに跳んでいるのを見ることができてとてもうれしかったです。 高いハードルに挑戦する子もいましたし、為末先生が言われた通りにスピードを上げていくし、みんなで一緒に楽しくチャレンジしようという思いがよく現れていました。 私たち大人が見ていても楽しくなるような授業でした。

夢の授業についても為末先生がいろいろ質問されたり、友だちの考えを聞いたりすることで、子どもたちは気づくことが多かったと思います。 みんな自分の考えをしっかり友だちに話していましたし、それを聞いて受け入れている子どもたちの姿を見ることができました。 為末先生とみんなの気持ちが心地よいハーモニーとなって、すごくいい話し合いの時間になり、子どもたちの瞳がとても輝いている印象を受けました。

食育の授業では、こばたさんが「カラダは食べ物からできている。だからちゃんと食べなければいけない」と何度もお話されていましたが、本当にその通りだなと改めて思わされました。 プロスポーツの選手はこんなにたくさん食べているのか!というのも驚きでしたし、運動前と運動後にはどんなものを食べたらいいのかなど、 わかりやすく教えてくださったので、子どもたちも量や食べ方を考えながら食事をする大切さを学んだのではないでしょうか。

川津小学校の学校目標は「肩組んで、一生懸命がかっこいい 川津っ子」というものですが、友だちと協力し、相手に心を開くことで共生しようという思いと、 何かを一生懸命やる子が認められる学校にしていきたい、という思いが込められています。今日の授業でもそういう姿勢が子どもたちに現れていたなと感じます。 子どもたちには今日学んだことを今後の人生に生かしてくれたらと思いますし、夢がかなうようにイメージをどんどん膨らませていってほしいですね。


松江市立川津小学校 加藤 潮 主幹教諭

今日の授業は1日を通じて、1つのストーリーがあったのかなと思いました。為末先生の夢であったハードルの授業、子どもたちの思いや考えを伝える夢の授業、 その夢をかなえるための食育の授業と、3つの授業がつながっている印象です。特に食と夢がつながる、という感覚は私にとっても新しい観点でした。 学校でも普段から食育には力を注いでいますが、食と夢をつなげて考えていなかったので、子どもたちには気づきが多かったんじゃないでしょうか。

世界で戦ってきたアスリートと触れ合える機会というのはめったにないことなので、子どもたちは今日の授業で得るものが大きかったと思います。 私自身、学生時代に400mハードルをやっていたので為末先生の指導に学ぶことがありました。ハードル指導にあたってはいかにハードルを跳ぶか、 というハードリングの技術を中心に教えるのですが、為末先生はスピードの力を生かして跳ぶことを重視しておられました。スピードを出すとハードリングがうまくいかないと跳べないので、 自然とハードリングがうまくなる。小学生はテクニックより一連の流れで教えたほうがわかりやすいんだなと実感しました。

為末先生はハードル選手としては小柄で、決して体格に恵まれた方ではなかったと思います。相当の努力と精神力がなければ、 身長の高い世界の選手たちと競って勝ち抜くことはできなかったはずなので、本当にすばらしい選手なんですよ。 そういう為末先生とふれあったことで「僕たちもがんばれば夢がかなうかも」と考える子がいてくれたらいいですね。 そして、夢にむかって努力することも大切ですが、たとえ夢がかなわなくても努力したことは何かのプラスになっていくんだ、ということを子どもたちに感じてもらえたらと思います。


為末先生の感想

今日はすごく元気で人なつっこい子が多いなという印象でした。休憩時間にみんなからサインぜめにあいましたが、みんな僕のこと誰だかわかってないだろうと思ったりして(笑)。でも、あれくらい元気なのはいいですよね。

ハードルの授業はこれまで高さを変えて跳ぶということをやっていましたが、今回は高さよりスピードを変えていくことで疾走感を味わってもらいたいと思い、少しやり方を変えてみました。 実際に授業の中でどんどんスピードが速くなっていましたし、コツをつかむのも早かったので、子どもたちがハードルに親しむにはこの形がいいのかもしれません。 特に今日の子どもたちはチャレンジ精神旺盛で、ハードルを跳べるかどうかギリギリの高さで跳ぼうとする子がとても多かったので、それはすごくよかったと思いますね。

夢の授業でも、いろんな夢を話してくれてとてもよかったです。子どもの夢って、くわしく聞いてみると本当は何になりたかったんだっけ?  とわからなくなることがあるものですが、今日はそういう子がほとんどいなくて、みんなしっかり夢について考えているなというのが一番の特徴でしたね。 質問してくる子も多かったですし、いろんな子と語り合えて面白かったですよ。

でもみんなの話を聞いていて、やはり子どもの夢は経験が大きいんだなと思いました。例えばエンジニアになるために高専に行くという子がいましたが、 高専の存在を知らないとそういう発想は出てこないはず。おそらく身近にモノづくりをしている人がいるんじゃないかと思うんですが、子どもたちは人生の中で見聞きしているものが少ないので、 その中から得た経験が夢につながっていることを感じました。この授業が子どもたちにとって、そういう経験のひとつになれればいいなと思います。

ただ、夢シートはもう少し書きやすいフォーマットにしたほうがいいのかな、という反省もあります。例えば「あなたの夢はなんですか?  それはどんな情景ですか?」といった風に、空欄を埋めていくとストーリーができあがるような形にしたほうが書きやすいのかな。 自由作文形式だと手が止まってしまう子もいるようなので、それは今後の課題にしたいなと思っています。

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