3時間目は、みんなで「夢」について話し合う授業です。
6年生にはあらかじめ専用シートに将来かなえたい夢を書いてきてもらい、授業ではシートをもとに夢を実現するまでの「夢の階段(ストーリー)」をグループに分かれて話し合ってもらいます。


卒業前の6年生というと「人前で自分の夢について話すなんて…」と恥ずかしがる児童が少なくありません。そこで授業を始めるにあたって、 為末先生は児童たちに「チャンピオンマインド」について語りかけました。
「どんな人の夢が叶い、どんな人の夢が叶わなかったのか、ということを調べた研究があるんですが、夢が叶った人の特徴は行動する人だということ。 しっかり考えるかどうかはあまり関係がなくて、むしろいきなり行動しちゃう人のほうが成功率が高いことがわかっているんです。 だから今日までにシートを埋められなかったり、夢についてしっかり考えていないくても大丈夫。何を言ってもかまわないので、思ったこと感じたことをどんどん話してみてくださいね」

事前授業で考えたの夢の発表  -自分の考えを人前で話す-

まずは、みんなが考えてきた夢について発表してもらいました。
「僕の夢はプロ野球選手になることです。2016年の日本ハムの逆転優勝を見て、僕も野球選手になりたいと思いました。バッティング力を生かして日本不動の3番になりたいです」
「プロ野球選手になって、1年目からホームラン30本と盗塁30個、打率3割のトリプルスリーをとりたいです」
「ソフトボール選手になりたいです。世界一有名なチームに入って、ピッチャーとして活躍したいです」
「サラリーマンの社長になりたい。給料は1億円くらいほしい」
「プロ野球選手になりたいです。20歳の時にヤクルトに入って、セカンドになりたいです」
「声優になりたいです」

6人ほどの児童が夢について発表すると、「現役選手の中で、あこがれの人はいますか?」「プロになったら、どんなことをしてみたいですか?」
「ホームランは打ってみたいですか?」など、為末先生が1人1人にインタビューを行いました。

その後、いよいよ話し合いの時間ですが、為末先生から話し合いにあたって大事にしてほしいポイントが紹介されました。
「何歳の時にどのチームに入って、どのポジションになって、どんなプレイをするのかというふうに具体的に考えてほしいということ。 たとえば高校野球で甲子園に行くのか、それともアメリカの高校に進んでプレイするのか?
そんなことも考えてみてください。これを将来必ずやらなきゃいけないということではなくて、今日はなるべく自由に大きなストーリーを考えてみましょう。 それからもう1つ、自分が夢を実現した時に誰が喜んでいるかを考えてみてください」


話し合い  -夢のストーリーをみんなで話し合う-

4~5人のグループに分かれ、いよいよ子どもたちの話し合いスタートです。冒頭の発表ではシャイな子が多かった印象ですが、すぐに会場のあちこちで活発な会話が始まりました。 為末先生も子どもたちの輪に入って、どんどん質問を投げかけていきます。 「車の整備がやりたい」という子に「どんな車を整備したい?」と為末先生が質問すると、「うーん、フェラーリかな」と児童。 保育士になりたいという女子には「どうして保育士になりたいと思ったの?」「小さい子が好きだから」「どんな保育士になりたい?」 「優しい保育士になりたいかな」と会話のキャッチボールが進みます。

「サラリーマンになりたい」という意外な?夢を持つ子には「なんでサラリーマンなの?」と為末先生も興味津々。 「仕事ができる気がするから」と答える児童に「どんな仕事をするの?」「えー、サイバーセキュリティかな」 「旬な仕事だね! どうすればできるのかな?プログラミングとか?」とどんどん夢を掘り下げていきました。

話し合いも後半になると、あちこちでインタビュー合戦がくり広げられる盛り上がりに。「医者って何科の先生になるの?」「わからない」 「外科医とかええやん」「よし、病気になったら治してやるからな」なんて会話が交わされたり。 「先生は子どもの頃になりたかった職業につけたんですか?」と担任の先生に質問する子も現れ、先生も巻き込んでさまざまな話し合いが行われました。

発表 -夢を具体化し、目標を設定する-

話し合いが終わり、子どもたちが話し合いの中で考えた「夢のストーリー」を発表してもらう時間です。 為末先生が「発表してくれる人!」と募りますが、なかなか手が挙がりません。そこで、まずは先生が指名して、何人かに発表してもらいました。

「私の夢はバレーボール選手になることです。高校までバレーを続けて20代で強いチームに入り、アンダーハンドパスがやりたいです。 試合に勝つことでチームのみんなや、試合を見ている人たちが喜ぶと思います。35歳になったら違うことをしたいです」
「高校生になったら野球部に入って、卒業したらプロ野球選手として日ハムに入り、18歳で1軍に入ってどんなボールでも取れるセンターとして活躍したいです。 僕がプロ野球選手になったらお母さんが喜ぶと思います」


1人ずつ発表者を指名しながら「誰か発表してくれる人はいないかな? 手を挙げる人いない? ここで夢を発表することで人生変わるかもしれないよ。 まわりの人が応援してくれるからね。言って損することはひとつもない。むしろ自分から発表した人は夢が叶うと思うよ。 やってみない?」と子どもたちを励まし続ける為末先生。何度か呼びかけした後、ついに1人の児童から手が挙がりました。 「えらい! 人生が変わるな!」と為末先生も児童の勇気を称えます。

「将来の夢はスタイリストになることです。高校を出てファッションの勉強をし、人気のお店で店長になって、お客さんや家族に喜んでもらえるように服を作ったり売ったりしたい」
「プロ野球選手になりたいです。18歳で広島カープに入団して、初打席で初ホームランを打ってお母さんにボールをプレゼントしたいです」
「僕の夢は医者になることです。25歳で京都大学医学部に入って、外科医になって病気で苦しんでいる人を助けたいです。年収10億稼いで、親にお金を返したいです」
「将来の夢はSPです。テレビで戦っているところを見て、なりたいと思いました。SPになって内閣総理大臣を守りたいです」
「僕の夢は自分の料理の店を開くことです。来た人がおいしくて幸せになれるお店にしたいです。親の料理がおいしくて、料理で人を幸せにするのってかっこいいと思ったからです」

1人が手を挙げると、次々に児童たちから手が挙がるようになりました。勇気をふりしぼって発表してくれた子たちに、為末先生は「すばらしいですね!」と惜しみない拍手を送りました。

まとめ 

最後に為末先生からメッセージが贈られました。
「今日は手を挙げようかどうか迷った子もいたと思いますが、人前で自分の夢を言うと、いいことばっかり。 悪いことなんてほとんどないので、自分はこういうことをやりたいとどんどん言ってみてください。途中で夢が変わってもいいんだよ。 野球やめてサッカーにしたってかまわないからね。それから、友だちの夢も応援してあげてほしいです。 まわりが応援してあげると、夢は叶いやすくなると思いますから。それからこれはちょっと難しいかもしれないけれど、夢というのは手段、方法なんです。 料理店を開きたいという子がいたけど、料理を作ることは手段であって、料理を作ることで誰かを幸せにしたい、というのが本当にやりたいこと。 何をしたいのか、それをすることで誰を喜ばせたいのか、という2つはセットになっています。みんなもぜひ、誰が喜んでくれるのか考えてみてください」
と、6年生にエールを贈り、爲末大学食育学部の授業はすべて終了となりました。

©NIPPN CORPORATION All rights reserved.