3時間目は、自分たちの「夢」についてみんなで話し合う授業です。5年生と6年生の児童にはあらかじめ「夢の発表シート」を配布し、将来かなえたい夢は何かをひとこと書いてきてもらいました。授業では夢を実現するまでのストーリー(物語)をグループに分かれて話し合ってもらいます。さらに今回からシートには新たに「夢を実現するために明日から何をするか」という質問もプラス。夢のストーリーの延長として、一緒に考えてもらうことになりました。新しくなった夢の発表シートに、夜須小の子どもたちはいったいどんなストーリーを描いていくのでしょうか?


 

注目の話し合いを前に、為末先生から話し合いに関する3つのルールが紹介されました。「1つめは、まわりがどう思うのかなということは忘れて、自分がどう思うかを大事にしてください。2つめは、みんなとちがうことはいいことだ、と思ってどんどん話してください。3つめは、友だち同士でどんどん話してお互いの夢を広げてあげてください」


事前授業で考えたの夢の発表-自分の考えを人前で話す-

まずは、みんなが考えてきた夢について発表してもらいました。「発表してくれる人、手を挙げて!」と為末先生が問いかけましたが、なかなか手が挙がりません。 いつも元気いっぱいの夜須小っ子ですが、人前で自分の意見を発表するのはちょっと苦手な様子。そこで為末先生が指名して、8人の児童に発表してもらいました。

指名された子どもたちは「プロ野球選手になりたい」「保育園の先生になりたい」「漁師になるのが夢」「農家になってメロンを作りたい」とそれぞれに夢を語りました。それに対して為末先生は「どんな選手になりたいですか?」「いつ頃からそれが夢になったんですか?」とインタビュー形式で思いを引き出していきます。はじめは戸惑っていた子どもたちも、質問を受けて「4年生くらいから野球が面白いと思い始めて」「テレビで大きな魚を釣っている漁師さんを見てやってみたくなった。チヌを釣ってみたい」など、しっかりと受け答えをしていきました。

なかには「ビートボクサーになりたい」という男子児童が登場。「16回目で初めて聞いた夢だね!ちょっとやってみせてよ」と為末先生は興味津々。すると保護者や先生も見守る中で堂々としたパフォーマンスを披露し、会場から大きな拍手が。「すごいなあ!」と為末先生も関心しきりでした。また山﨑一平先生も為末先生に指名され、「釣りが趣味なので、バス釣りのトーナメントで優勝したい」と熱い夢を語る場面もありました。

みんなの発表が終わったところで、いよいよ話し合いの時間です。為末先生から話し合いにあたって「何歳の時にどうなっているのか、プロ野球ならどのチームに入るとか、時間軸で具体的に書いていってください。それから、自分が夢を実現した時に誰が喜んでいるか、夢のために明日何をするかについても考えてみてください」とポイントが紹介されました。



話し合い  -夢のストーリーをみんなで話し合う-


4~5人のグループに分かれ、20分間の話し合いスタートです。発表ではなかなか発言できなかった児童たちでしたが、いざ話し合いが始まると、ふだんから男女関係なく一緒に遊んだり話したりしている夜須小っ子の本領発揮。開始直後から「どこのポジションがいいの?」「英語はいつまでに話せるようになる?他の外国語はどうなの?」とつっこんだ質問が飛び交います。

為末先生も子どもたちの輪に積極的に入っていき、「ペットショップの店員になるには、どうすればいいのかな?」「どこの高校に入って何をしようか?」と具体的な質問を投げかけていきます。気づけば会場は児童、為末先生やこばた先生、夜須小の先生方、取材に来ていたメディア関係者まで集まって、質問したりされたりの会話がヒートアップ! 

年齢ごとに何をするのかリストアップする児童がいたと思えば、現在から夢を実現する日までを1本の線で結び、ライン上のどこで何をするのか書きこんでいく児童もいました。夢の内容はもちろん、夜須小の子どもたちは独創的なアプローチでストーリーを組み立てる人が多いのが印象的。為末先生も「多様性があって面白いね!」とニコニコしながら児童の様子を見守っていました。


発表 -夢を具体化し、目標を設定する-


話し合いが終わり、子どもたちが話し合いの中で考えた「夢のストーリー」と「夢のために明日から何をするか」について発表してもらう時間です。為末先生が「最初に発表してくれる人!」と呼びかけましたが、なかなか手が挙がりませんでした。 そこで為末先生から指名された児童がみんなの前で発表しました。

「私の夢は、ドクターヘリに乗って事故があったところやケガをした人のところに行って人を助けるフライトドクターです。中学、高校は医学のことを少し知って、大学に入ってから専門の勉強をして、卒業してからももう少し医学を学んで、医療関係で働いて自分の実力を知った後にできないことを勉強して、フライトドクターになります。明日からまじめに勉強します」「僕の夢はサッカー日本代表になることです。中学は明徳義塾でレギュラーになり、高校ではいい成績を残し、あとはまだ決まっていませんがポジションはサイドをやりたいです。 明日からはサッカーの勉強を今までより多くします」

為末先生は児童に質問しながら夢のストーリーを掘り下げながら、発表が終わるたびに「発表してくれる人いないかな?」と児童たちに呼びかけます。「自分から夢を話すと夢がかなうって法則、知ってる?どういう仕組みなのか僕にもまだよくわからないんだけど、本当なんだよね。言っておいたほうがいいよ!」という話をすると、さきほどビートボクサーになりたいと発表した児童が手を挙げました。

「学生時代はずっと練習をして、24歳でマスターして26歳で高知大会に出て、29歳で日本大会、34歳で世界大会に出て有名人になって、37歳のときに東京ドームでコンサートを開きたいです」

それを受けて「完璧なプランだね!世界大会は毎年やっているの? ちょっと調べてみるといいね。僕も調べてみます。がんばってください、応援しています」と為末先生が熱いエールを贈りました。

「僕の夢は陸上の短距離選手になることです。小学6年生になったら陸上を始めて、中学で陸上部に入って練習し、家に帰っても走り続けます。高校生になったら強豪校の陸上部に入ります。その時もずっと家に帰っても走り続けます。高校では四国大会でいい成績を残し、全国大会では上位には入れなかったけどスカウトが来ます。それからはプロになって、いい成績を出します。明日からやることは、教えてもらったことを常に意識して練習することと、一番大切なことは毎日練習することです」「私の夢は公務員になることです。公務員になるために勉強はするけど、今は新体操をしているので高校までは新体操をしたいです。中学1年生の時に県大会でロープの演技で1位をとって、勉強とスポーツを両方するために学園に入学したいです。大学は公務員専門の大学に入って、大学を卒業したら公務員のテストを受けたいです。公務員になったらまちづくりの仕事がしたいです」

授業前は「サッカー選手」「公務員」といった職業名だけだった児童たちの夢は、約20分間の話し合いの中でぐんぐんと膨らんで、具体的なストーリーへと進化していました。「他にも面白いストーリーがあったので、もっともっとみんなの話を聞きたいんだけど…」と為末先生は興味津々でしたが、残念ながらここで3時間目が終了となりました。




まとめ      

最後に為末先生から児童たちへ「夢がかなう秘訣」についてのお話がありました。
「1つめは、とりあえずやってみる。みんなには明日から何をやるか考えてもらったけど、それをぜひやってみてください。ポイントは3日坊主でもかまわないということ。やるなら最後までやらなきゃと思わなくていいので、とにかくやってみて、ダメならやめてもいい。2つめは、友だちの夢を応援すること。今日発表してくれた人の夢はみんなで応援しましょう。最後は、なぜそれをやりたかったんだっけ?という原点を大事にするということ。たとえばフライトドクターになりたいと思った最初のきっかけってなんだっけ?と振り返ってほしいんです。 

今日みんなに夢を考えてもらったけど、途中で夢は変わってもかまわないよ。今日決めたことが全てではないので、時々夢のことを考えながらみんなでがんばってほしいと思います。夢には職業と、夢の奥にある思い、という2つが含まれているんですよね。たとえばペットショップの店員が夢だとしたら、店員になってお客さんをどんな気持ちにさせたいのか、夢の奥にあるものは何かということを考えてみてください」と児童たちにエールを贈り、爲末大学食育学部の授業はすべて終了となりました。