2時間目は、体を動かすために必要な食事について学ぶ授業です。
多くのトップアスリートを栄養面で支えるスポーツ栄養士のこばたてるみさんを講師に迎え、運動と食事の関係やバランスのいい食事の摂り方など、 為末先生と星先生の体験談もうかがいながら、ゲーム感覚で楽しく学んでいきます。




主食、主菜、副菜・・・。食べ物にはそれぞれ役割がある

2時間目は体育館に移動し、「食育」について学ぶ時間です。

まずこばた先生が「朝ご飯、食べてきた人!」と聞くと全員が手を挙げ、日ごろから食事を大切にしていることがわかりました。ちなみに為末先生と星先生はこの日、二人とも新幹線の中でサンドイッチを食べたとのこと。特に星先生は「レタスやトマト、卵も入っているものを選び、飲み物は野菜ジュースにしました」と、栄養バランスに気をつけたそうです。

ここでこばた先生は、主食、主菜、副菜、汁もの(副菜2)、フルーツ、乳製品のお皿を描いた紙をホワイトボードに貼り、「食べ物にはそれぞれ役割があります。ご飯、麺、パンなどの主食はエネルギー源です。主菜には筋肉、骨、血液など、体をつくる働きがあります。野菜や海藻、きのこなどの副菜にはミネラルやビタミンが含まれており、コンディショニングの役割があります。コンディショニングとは、風邪を予防したり、お腹の調子を整えたりといったことですね。乳製品はたんぱく質がいっぱい含まれているから体づくり、フルーツはエネルギーにもなりますが、ビタミンも豊富なのでコンディショニングを担っています」と説明してくれました。


ぴったりの食べ物は食べるタイミングによってちがう

続いて、こばた先生は為末先生と星先生に現役時代の“勝負メシ”を質問。星先生の「うなぎ」については、「栄養価が高く、栄養素をエネルギーに変えるのに必要なビタミンB1、B2も豊富ですね」。為末先生の「おにぎり」についても「運動の主なエネルギー源ですね」と解説。二人とも、走ったり泳いだりするエネルギー源となる物が“勝負メシ”というわけです。

そしてレース前の食事について「30分前にカステラを食べます」という星先生に対し、カステラは油が少なく、エネルギー源となる糖質がたくさん含まれていますね。でも同じお菓子でも、ケーキには生クリームやバターがたっぷり使われていますよね。油脂類は胃に留まる時間が長いので、レース直前に食べるのはあまりオススメできません」と説明。

続いて為末先生が「レース前にはバナナ」と答えたのを受けて、「バナナには吸収の良い糖質が含まれているから、すぐにエネルギーになりますね」とこばた先生。「では、まだ青いバナナと黄色いバナナ、少し黒いはん点が出たバナナ、レース直前に食べるならどれがいいでしょう?」と質問すると、多くの児童が「黒いはん点」と答えました。正解は「黄色か、黒いはん点」。黄色くなるとバナナのデンプンがブドウ糖に変わるので、体に吸収されやすいのだそうです。似たものでも、食べる目的やタイミングで適したものがちがうというわけです。

こばた先生はさらに「苦手な食べ物がある人!」と質問。「魚!」「ピーマン!」「アスパラガス!」と、何人かの子には苦手があるようです。でも好ききらいは直したほうがいいことは、みんなわかっています。

「アレルギーは別ですが、苦手なだけならとりあえず一口だけチャレンジしてみると、意外と食べられることもありますよ。それから、ほうれん草がだめなら小松菜など、似た栄養価のものを食べるといいですね」。星先生も「私は牛乳が苦手ですが、ココアに牛乳を入れたり、カフェオレにしたり、同じ乳製品のヨーグルトを食べたりするようにしています」と工夫しているようです。


メニュー全体でバランスの良い食事を考える

続いては、ゲームを通して栄養バランスの良いメニューを考えます。ひとり1枚、主食、主菜、副菜の料理イラストのカードを持って、体育館の中を走り、為末先生が「ストップ!」と言ったら、主食、主菜、副菜の3種類が揃うように相手を探して3人1組のチームを作ります。

早速ゲームを開始。「ストップ!」と声がかかると自分のカードを見せ合い、チームができたらしゃがんでいきます。全員がしゃがんだところで答え合わせ。
あるチームは「ご飯」「ハンバーグ」「豚汁」の組合せ。「豚汁には豚肉が入っているけど、副菜で良いですか?」と星先生。「野菜が多い豚汁かな?」と為末先生。

次のグループは「ご飯」「ご飯」「クリームシチュー」で、「ご飯」が2人になってしまいました。するとひとりの子が「ご飯お代わりするから!」と言って、大きな笑い声が起こりました。

ほとんどのグループが正解できたので、今度は「中華」「洋食」「和食」というようにメニュースタイルも考えてチャレンジ。遠くの人にも見えるようにカードを高く上げて、相手を探しました。

答え合わせでは、あるグループは「スパゲッティ」「サーモンのムニエル」「野菜スープ」で、こばた先生がそれぞれ何の役割かを聞くと「スパゲッティはエネルギー、サーモンは体づくり、野菜スープはコンディショニング」と、見事正解。「いつもの食事では、スパゲッティの味つけがミートソースなら体づくりの役割も含まれるなど、料理に入っている食材やその働きも考えてメニューを選ぶといいですね」。

最後にこばた先生が星先生に「星先生にとって食事とは?」と質問すると「ご飯を食べると力が出る!と感じます。また、子どものときは、夜は家族そろって食べましたし、選手になってからは合宿や海外でコーチやチームメートと食事しました」と星先生。

こばた先生が、「食事は体の栄養補給にもなるし、みんなで楽しく食べると心の栄養にもなりますね。みなさんも学校では友達と楽しく給食をモリモリ食べてほしいと思います」としめくくりました。