自分へのチャレンジ、体育の時間
周南市の南東に位置する櫛浜小学校は、まもなく創立150年の節目を迎える伝統校。緑あふれる森が校舎を包みこみ、少し歩けば海へ出る、そんな恵まれた自然環境の中で学校生活を送る5年生62名、6年生51名がハードルの授業に参加しました。アスリートによる直接指導は貴重な体験ということもあり、多くの保護者が見守る中、体操着姿の児童たちが元気に校庭へ集まりました。
「今日はハードル、食育、夢の3つのテーマについて取り組んでもらいますが、『夢・学び・心』という櫛浜小学校の目標に通じることが多いと思います。たくさんのことを学んでください」という河村康男校長による挨拶のあと、為末先生が「今日は一緒に勉強しましょう。」と児童たちに挨拶して、1時間目の授業が始まりました。
当初は6年生を対象に行われる予定でしたが、5年生が見学に来ていたのを知った為末先生から「せっかくだから、ぜひ一緒にやりましょう」と声がかかり、急遽5・6年生合同での授業に変更。「ハードルは嫌いだという人、手を挙げて!」と為末先生の質問にたくさんの手が挙がると「みんな正直だね(笑)。今日はハードルが上手になって、少しでもハードルを好きになって帰ってもらいたいと思います」とコメントし、早速ウォーミングアップがスタートしました。
ウォーミングアップで楽しみながら体をほぐそう
まずは2人1組で向かい合い、ひとりはドラえもん、もうひとりはドラミちゃんになります。「先生がセット!と言ったら、2人で握手する寸前のポーズをしてください。そうしたらドラえもんかドラミちゃん、どちらかの名前を呼んだら呼ばれた人が相手の手を握り、呼ばれなかった人は相手の手から逃げてください。じゃあ行くよ、セット!」という為末先生の掛け声でゲームが始まりました。「ドラミちゃん!」「ドラえもん!」と先生が言うたびに、「わーっ!」「やった!」という児童たちの声が校庭に響きました。
次はドラえもん・ドラミちゃんの代わりに偶数・奇数でチャレンジ。「セット…8!」「3+2!」と、数字→足し算・引き算→掛け算とだんだん計算が難しくなっていきます。いかに早く暗算をして、手を動かせるかがポイント。すぐに動けた人、「計算できていたのに!」と悔しそうな人、いろんな表情が入り混じって一気に盛り上がりました。
最後は、足じゃんけん3回勝負です。普通の足じゃんけんに続いて、高くジャンプして空中じゃんけんにチャレンジです。「こうやってやるんだよ!」と手本を見せた為末先生のジャンプの高さにハッとする児童たち。負けじとばかりに、みんな空に向かって元気一杯ジャンプしていました。
速く走るためにいちばん大事なこと
体がほぐれてきたところで、ハードルの練習に入ります。まずはハードルを跳ぶために必要なダッシュの練習。「足が速くなるにはどうすればいいか知っている人?」と為末先生が質問すると「腕をふる」「つまさきで蹴る」「バタバタ走らない」などの意見が児童たちから出ました。
「実はいちばん大事なのは姿勢。体をまっすぐにすることなんです。では、どういう形がまっすぐなのか、やってみましょう」と為末先生の号令で、全員その場であおむけになりました。そして膝の裏、腰の後ろ、首の後ろ、それぞれ地面にぐっと押し付けるようにして10秒キープ。「そのまま立ち上がると、体がまっすぐになっている状態です。もし忘れてしまったら、自分が焼き鳥になったつもりで頭から足まで体に串が1本ささっているところを想像してみてください」と為末先生。
体をまっすぐにする感覚を覚えたところで、スキップしながら前に進むダッシュの練習。慣れたところで、今度は上に向かって高くスキップ。続いて、前に向かって大きく速くスキップ。「前に前に大きく、飛ぶような感覚だよ!」という為末先生の手本を間近に見て、1歩のあまりの大きさにみんなビックリ。
ザワつきながらも、先生を真似てジャンプするようにスキップする児童たち。最後は手を大きく振りながら速くスキップする練習をして、いよいよハードルの練習に取り組みます。
ハードルをクリアして今の自分を超えていく
まずはハードルレーンの中から好きなところを児童たちに選んでもらい、高くジャンプしてハードルを跳ぶ練習です。「上に上に、思いっきり跳んでみよう!ハードルは倒しても、振り返らなくていいからね」と為末先生が児童たちに呼びかけると、それぞれにレーンを選んでチャレンジを始めました。
ハードルに苦手意識の強い児童が多いということでしたが、みんなスタートから積極的に取り組んでいるのを見て「そうそう、それだよ!前だけ向いて!みんなうまいな!」と為末先生の指導にも熱が入ります。さっそくハードル間の距離を変えて、3歩でハードルを跳ぶレーンを2コースセット。
「上に跳べるようになったら、次は踏み切り。ハードルの上に輪っかがあるとこを想像してみてください。その輪っかをくぐるように、しっかり足を踏み切ってハードルを越えてみよう!」と為末先生がやり方のお手本を見せると、「すごーい!」と思わず拍手が。児童たちの素直な反応に「ずっとハードル跳んでいたからね」と為末先生も笑っています。
「1台目のハードルと同じスピードで走ることが大事だよ。1台目を蹴とばすくらいの勢いで跳んでみよう!」「ハードルの上に壁があって、それを蹴破るように跳んでみて!」と跳び方のコツを教えながら、1人ひとりに声をかける為末先生。児童たちも転んでもすぐに起き上がって完走する人、「オリャー!」と雄叫びを上げながら力強く跳ぶ人などパワー全開。「そう、そんな感じ!いいじゃんいいじゃん」と先生も嬉しそうです。
世界最高峰の高さにチャレンジ!
最後はお楽しみのデモンストレーションタイム。ハードルの高さを1mに上げて「これがオリンピックでのハードルの高さだよ。跳んでみたい人!」と先生が問いかけると、5年生と6年生一人ずつ男子が手を挙げて果敢にチャレンジ!最後に為末先生が児童たちの目の前でオリンピックハードルの高さで軽々と走り抜けると「ウオー!!」と大歓声が上がりました。
「今日先生が言った、姿勢をピンとして走ることを覚えておいてください。そうすれば、どんどん足が速くなると思います」と為末先生からの挨拶でハードルの授業は終了となりました。