受講のきっかけ

当校には「本気・感動・笑顔」という合言葉があり、本気でチャレンジすることで感動体験を味わい、笑顔で幸せを運べる人になってほしいという思いで児童たちと接しています。また「本物に出会う」ということがキャリア教育で何より大事な教材だと考えていて、本物の才能に触れ、夢を実現された方と出会う機会を1つでも多く子どもたちに作りたいと思っております。ですから今回の爲末大学食育学部は願ってもないチャンスと考え、今日の授業をみんなで楽しみにしておりました。(校長談)


神戸市立魚崎小学校 山本 直子 校長

あっという間の3時間でした。為末先生が選手としてすばらしい方だということは知っておりましたが、今日お会いしてみて、人間としての大きさ、優しさ、温かさ……お人柄のすばらしさに大変感銘を受けました。今日は200名の大人数が一緒に授業に取り組むということで少し心配しておりましたが、自分が得てきたものを伝えようとしている為末先生の姿に、児童たちも何か感じるものがあったんじゃないかと思います。私自身も陸上競技を通じて生き方や考え方を学ばせてもらったなという気持ちです。

食育については、当校には栄養教員もおりますし、自然学校でみんなで食事を作って食べるといった機会もあり、食べ物について考える機会は多いと思います。200人で同じごはんを食べるというのは本当に面白い体験で、自分が嫌いな食べ物が入っていても、他の子が食べているのを見ていると不思議と食べられるんですよね。そういう機会を重ねることで、自然と栄養について頭でわかってくるのではないかと考えています。

夢の発表でも、為末先生が子どもたちの思いをしっかりと受け止めてくれたからこそ、みんな堂々と人前で夢を語ることができたと思います。児童たちも積極的に話し合いをしていて、とてもよかったですね。小学校も高学年になると「人前で夢について語るのが恥ずかしい」と感じる子が多いものですが、当校の6年生は自分から「見て見て!」と夢のシートを差し出してくるんですよね。男子・女子関係なく話し合うことができるのは、昔から地域の結束力が強く、助け合いを大事にする魚崎という地域性が影響しているのかもしれません。

6年生はあとわずかで卒業していきますが、これからも自分を磨き続けてほしいと思っています。今日の授業をはじめ、さまざまな体験から学んだことを実践していくのは一生のことですから。そして、今日の授業もたくさんの方が支えてくださったからこそ実現していますから、子どもたちには感謝の心を忘れないでいてほしいですね。


6年1組担任 松島 聡志 先生

今日は子どもたちが為末先生という本物の姿、本物のアスリートの動きを間近で見ることができたというのが、何よりも一番大きかったと思います。子どもたちには事前にYouTubeで為末先生の現役時代のレース映像を見せたのですが、地域のクラブでサッカーや野球などスポーツをしている運動好きな子が多いこともあって、「すごい選手が来るんだ」とみんな今日の授業を本当に楽しみにしていたようです。1時間目から元気よくハードルに取り組んでいて驚きましたね。

食育の授業については、こばた先生が考えてくださったテーマと教材がとてもよかったなと思います。事前に送っていただいたお弁当カードはどれも色合いがよくて、子どもたちも楽しみながらお弁当づくりに取り組めたと思います。夢の授業についても、みんなで真剣に話し合っていて、夢について語り合うとてもよい時間になったと思います。短い時間でしたが、みんな集中力を発揮して積極的に話し合いをしていてよかったです。

子どもたちにとって、本物に触れるというのは何にも替えがたい貴重な経験になったんじゃないかと思います。6年生の小学校生活もあとわずかですが、普段の何気ない毎日を大切にして、これからの将来を大事に過ごしてほしいなと思います。


為末先生の感想

今日はとてもノリのいい学校でしたね。「ハードルが好きな人!」と聞いた時はほとんど手が挙がりませんでしたが、はじめからハードルをテンポよく跳んでいたので、3歩で跳ぶレーンをすぐに作ったり、たくさんハードルを跳べるように授業内容を考えました。女子でも高いハードルを跳べる子がたくさんいましたし、普段から運動をやっている学校なのかなという印象を受けました。

いつもなら子どもたちには「ハードルを倒しても振り返らないで走りきって」とくり返し話すんですが、これは振り返ると「失敗してしまった」という恐怖心や恥ずかしさが生まれてしまうから。それが魚崎小の子どもたちは最初から倒しても倒しても全く気にすることなく跳んでいて、他の学校にはない思い切りのよさがありました。むしろ「ちょっとは振り返ってハードルを確かめてもいいんじゃない?」と言いたくなったくらい(笑)。

それは夢の授業にも同じで、いつもは「まわりの目を気にしないで」と話し合いのルールについて話しますが、全く臆すことなくお互いの夢について話していて、班ごとの個性もあって面白かったです。どこから発想したのかインタビューしたいような夢もたくさんあって、時間が許せば一人ひとりとじっくり話をしてみたかったですね。

今日はスポーツ選手になりたいという子が多かったですが、よくよく聞いてみると、これまでにも夢について話し合っているみたいでした。1人の子が野球選手になりたいと話して、じゃあどうすればなれるかと何人かで話しているうちに、他の子の夢も野球選手になっていくような。そういう関係性も見えて面白かったですね。

他にも宇宙できのこを栽培したいという子に少し話を聞いたんですが、家族が宇宙関係の仕事をしているのかなと思ったら、エンデバー(スペースシャトル)の映像を見たのがきっかけだというんですよ。エンデバーなんてリアルタイムで見ていた世代ではないはずなので、子どもの夢って偶発性から生まれるんだなと改めて感じました。自動車を開発したいという子に「車は自動運転の時代になる。そんな時代に走る楽しさを感じる自動車を作るには、どのメーカーに入ればいいのか」と相談されたり、子どもたちと一緒に考える時間はとても楽しかったです。


こばた先生の感想

今日は久しぶりにお弁当のメニューを考えるという食育の授業になりましたが、学校によっては事前に栄養についてしっかり勉強した上で課題に取り組む場合があります。そうすると、比較的にどの班も同じようなメニューになりがちなんです。でも今日の子どもたちはそのようなことはなく、自分たちのアイデアを持ち寄って班ごとに一所懸命考えたんだな、というのが伝わってくる発表でした。

例えば、自分たちの好きなものばかり並べてみたり、お弁当箱からはみ出ちゃうんじゃないかというくらいぎっしり詰め込んだお弁当もあったり、お父さんもがんばるからという理由できんぴらごぼうを入れてみたり、素朴な個性が出ていて楽しかったです。ハイ!と元気よく手を挙げた班ほど個性的なお弁当だったのが興味深かったですね(笑)。

特に彩りがきれいなお弁当が多かったのが印象的でしたが、今の子どもたちはキャラ弁など、普段から彩りのきれいなお弁当を食べている子が多いんですよね。だから、自分でお弁当を考えるときに「色がきれいだから」「かわいく見せたいから」という理由で、嫌いな食べ物でもお弁当に加える傾向があるんです。そして、お弁当に入っていれば、嫌いなものでも食べられるんですよね。

夢を実現するために今何をすればいいのか、何を食べればいいか、と考えることも大切ですが、小学生は好きなことに対して一所懸命になれればそれで十分だと思います。今日のお弁当のように、嫌いなものでも楽しみながら少しでも口にできるものが増えたらステキですね。