子ども達たちにはあらかじめ「夢の階段シート」が配られ、自分の夢について考えをまとめてきてもらいました。「みんなの夢を聞かせてもらおうかな。発表してくれる人!」と為末先生が声をかけましたが、なかなか子どもから手が挙がりません。そこでグループごとにジャンケンをして、選ばれた人が順番に発表することになりました。
みんな恥ずかしそうにしていましたが「絵を描く仕事に就きたいのでイラストレーターになりたい」「部品を組み立てたり、人の役に立つロボットを作りたい」 「自分の好きなゲームがどんな風に作られているのか知りたいので、ゲームクリエイターになりたい」など、発表される夢はどれもかなり具体的。
どの子もしっかりと考えをまとめてきているのを知り、為末先生も積極的に「料理人になりたいのはなぜですか? どんな料理を作りたいですか?」と質問を投げかけます。 すると「テレビを見ていて、料理している速水もこみちがカッコいいと思ったからです。フレンチを作ってみたいです」と子ども達からは堂々とした答えが返ってきて、為末先生も「おお」と感動しきりでした。
発表が終わると、いよいよ話し合いです。「16歳までにこうなる、33歳でこうなるといったように、夢をかなえるまでのストーリーをなるべく具体的に書いてください。 また自分が夢をかなえた時に、自分以外のどんな人がどんな気持ちになっているかも考えてみて」と先生から課題が出され、グループに分かれて話し合いが始まりました。
最初の発表の時に、為末先生と子ども達の間で「なぜその職業を選んだの?」「夢がかなったら何がしたい?」など、ストーリーを考えるヒントとなる会話が交わされていたせいか、 各グループでの話し合いもスムーズに進んでいる様子。為末先生もみんなの輪の中に入って、「イラストレーターには何歳でなろうか?」「ユーチューバーになるなら、どんな番組を放送する?」と、 子ども達の思いを具体的な言葉に落とし込むための質問をしていきます。
そうかと思えば、子ども達から先生に逆質問する場面も。「先生の小さい時の夢は何だったの?」と、ある子どもが聞くと、「新聞記者になりたかったなあ。いろんなところに行ってみたかったから」 と為末先生。「大学って何歳から入れるんですか? どうやったら入れる?」と、具体的な質問もたくさん飛び出しました。
最後は、みんなで考えた「夢のストーリー」の発表です。
「僕は高校サッカーで活躍して注目される選手になり、Jリーガーになってガンバ大阪の選手になって、ワールドカップで優勝して小さい子たちに夢を与えたいです。世界に日本のサッカーのすごさを伝えて、親や家族、サポーターにも喜んでもらえるようにがんばります」 「中学校でバスケ部に入って選手として活躍し、スカウトされたら選手として世界で活躍できるようにがんばって、スカウトされなかったらユーチューバーになってバスケのゲーム実況の番組をやりたいです」 「18歳で専門学校に入って4年間勉強し、保育士の資格を取って、できれば幼稚園の先生の資格も取って、22歳で保育士になりたいです。その後は保育園で働いて、小さい子ども達に自分の知っていることを教えたりして、その保育園で一番人気の先生になりたいです」
はじめこそ照れくさそうにしていた子ども達たちでしたが、発表された夢はどの子もストーリーがかなり具体的。中には、うまくいった時といかなかった時の2パターンのストーリーを考えていたしっかり者?もいて、先生や保護者の間から驚きの声が上がりました。 そうかと思えば「夢をかなえた時に誰が喜んでいますか?」と聞かれて「自分です」と答えた子に「自分以外だよ(笑)」と為末先生がツッこんで、保護者、先生が大笑いする場面もありました。
最後に、為末先生からメッセージが贈られました。
「今日は夢をかなえるためにどういう計画を立てるか、というお話をしてもらいました。夢って途中で計画を変えてもいいから、5年後にこうする、10年後にこうなるという風に具体的に計画を立てることがすごく大事なんですね。 今日みんなに一番伝えたかったのは、夢の奥にある思いを考えてほしいということ。みんなが自分の夢だと言ったことは、ぜんぶ職業です。サッカー選手も保育士さんも料理人も、みんな仕事ですね。でも仕事は手段なんです。仕事をすることで、誰を喜ばせたいのか、ということを考えることがすごく大事。サッカー選手になってサポーターの人たちを喜ばせたい、美容師になって髪を切ってお客さんを喜ばせたい…そういう夢の奥にある思いを感じてほしいんです。すぐにはわからないと思うので、これから少しずつでいいから考えていってほしいなと思います」 最後は再び全員で記念撮影して、2時間目の授業は終了。人なつっこい河瀬小の子ども達は、終わった途端に為末先生のもとにワッと集まり、握手攻めにしていました。