地球温暖化防止と脱炭素社会

SDGS関連マーク

脱炭素社会に関する考え方

 当社グループでは、商品の安定供給を第一としながらも省エネ機器の導入や太陽光発電設備の設置、物流体制や商品に使用する包装資材の見直し、アップサイクル製品の開発も積極的に行うなど、様々な活動を推進しています。設備投資・改善のほかにも従業員に省エネ活動を周知する対策なども進めています。
 また、2024年2月にTCFD提言への対応について取締役会の承認を得ました。グローバル規模での気候変動は、当社グループの事業環境に大きな影響をもたらす問題と認識し、その対応は社会的責務と考えています。
 

TCFD提言への対応

はじめに

 ニップングループは、大地の恵みの恩恵を受けて、食にかかわる事業活動を行っています。事業活動が、環境に負荷を与えている事実を深く認識しながら、人と環境の調和をめざし、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
 当社グループは、持続可能な事業の継続により、価値を創造し続け、持続可能な社会を実現するためには、気候変動によるリスクと機会に関連する事業インパクトを評価し、対応策を立案、実行していくことが重要と認識し、2023年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しました。
 また、ニップンが取り組むべき6つの重点課題(マテリアリティ)のひとつとして、「環境保護への取り組み」を掲げ、事業活動による環境負荷を低減することで、人と環境の調和を目指し、持続可能な社会の実現に貢献していくことを取り組みテーマとしました。
 2023年よりシナリオ分析を開始し、まずは製粉事業のリスク・機会の抽出、重要度評価、対応策の策定を進めました。今後は分析カテゴリーを拡大し、気候変動のリスク・機会に対してより具体的な対応策を経営戦略に反映します。また、ステークホルダーとの対話を進めることで、社会の持続性と企業価値の向上につなげていきます。

ガバナンス

 当社グループはサステナビリティ課題への取り組みを経営課題と捉え、代表取締役社長を委員長とし、専門的知識を持つ社外取締役も含めて構成される「サステナビリティ委員会」を取締役会の直属組織として設置し、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視、統制を図っています(2回/年程度開催)。
本委員会で、長期的視点に立ち社会のサステナビリティを多角的に検討し、気候変動の対応を含む当社グループのサステナビリティに関する方向性、マテリアリティや戦略のあり方について審議し、取締役会へ答申します。取締役会はこれを受け、マテリアリティの承認やサステナビリティを踏まえた基本戦略を決定します。
 また、サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別、評価、管理するため「サステナビリティ実行委員会」を設置し、「環境部会」に加え、サステナビリティに関する情報開示と方向性を同じくする人的資本経営における「健康経営推進委員会」「HC(ヒューマンキャピタル)部会」を「サステナビリティ実行委員会」の下部組織に設置しました。横断的な取り組みを実施し、最高責任者である当社代表取締役社長が責任を持つ体制としています。

戦略「シナリオ分析」

 当社グループでは、2100年における世界の気温上昇が産業革命時期比で1.5℃上昇、4℃上昇の世界観を想定し、2030年、および2050年におけるシナリオ分析を当社グループの基盤事業である製粉事業に対して実施しました。また、下表に示すような研究機関で開示されているシナリオを参照し、重要度評価・財務影響評価を実施しました。
さらに、シナリオ分析で抽出されたリスクと機会をまとめ、リスクの最小化・機会の最大化に向けた対応策を検討しました。

気温上昇 移行シナリオ 物理シナリオ
IEA  「World Energy Outlook 2022」 IPCC  「AR5」
4℃ STEPS RCP8.5・RCP6.0
1.5℃ NZE RCP1.9
IEA:国際エネルギー機関(International Energy Agency)
IPCC:国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)

戦略「リスク、機会」

 当社への影響があると想定される項目として、リスク15項目を抽出しました。

種類 リスクの発生
する要因
具体的内容 財務への影響
移行 リスク 政策 及び 規制 GHG排出の価格付け進行
GHG排出量の報告義務の強化
炭素価格の上昇により、サプライチェーン全体(原料調達、製造、物流、エネルギー、廃棄等)のコストが幅広く上昇する
省エネ政策の強化 サービス(商品配送、委託製造等)を受ける場合には、業者側にかかるコストが価格転嫁され調達コストが上昇する
既存製品/サービスに対する義務化/規制化 プラスチック資源の循環や脱プラスチックを考慮した持続可能な容器包装・梱包資材へ切り替えるためのコストが上昇する
焼却処分時のGHG排出を抑えるため食品ロス削減を志向し、原材料の変更等によって原材料コストが上昇する
技術 低炭素技術への移行に伴う先行コスト 事業活動全般において、低炭素技術への移行に伴い、開発コスト、設備投資コストが増加する
新規技術への投資の失敗 規制対応のための技術開発に失敗し、他社の新技術に製品・サービスの需要を奪われ売上が減少する
市場 エネルギーミックスの変化 エネルギー価格の上昇に伴い操業コストが増加する
原材料コスト高騰 GHG排出削減への対応により、原材料(小麦、トマト、大豆、トウモロコシ、蕎麦等)のサプライチェーン全体の調達コストが増加する
評判 当該セクターへの批判
ステークホルダーの不安増大
気候変動対応が不十分な場合のステークホルダーからの評判が低下する(企業価値低下、売上の減少、資金調達コストの上昇、人材確保困難による競争力低下)
種類 リスクの発生
する要因
具体的内容 財務への影響
物理 リスク 急性 台風や洪水などの異常気象の重大性と頻度の上昇
山火事の可能性と重大性の上昇
暴風雨や高潮・干ばつ等の異常気象が激甚化し、サプライチェーン上での被害が拡大することで、操業の停止や原料の安定調達の困難化により収益の減少(機会損失)、売上保証、製造・調達コスト/復旧コスト/物流コストの増加、対策費用の増加につながる
慢性 降雨パターンの変化、気象パターンの極端な変動、平均気温の上昇 深刻な水不足により穀物生産地や当社グループの生産拠点が悪影響を受け、原料調達コストの増加、原材料品質低下、工場の操業停止により収益が減少する
暴風雨や高潮・干ばつ等の異常気象が激甚化し、製品に使用する副原料の供給が滞ることにより生産が遅延し売上が減少する
気温上昇や降水不順等により栽培適地が変化し、農作物の収量低下や品質劣化が発生し原材料価格や製造コストが上昇する。また調達ルート変更により原材料調達コストが増大する
病害虫被害の拡大による農作物の収穫減や品質悪化に伴い、原材料調達コストが上昇する
平均気温上昇によって消費行動が変化し、売上が減少する

戦略「リスク、機会」

 当社への影響があると想定される項目として、機会5項目を抽出しました。

種類 機会の発生
する要因
具体的内容 財務への影響
資源の
効率
効率的な輸送手段の利用
効率的な生産・流通プロセス
輸送効率化(トラック輸送の船舶への切り替え)、省エネ化により輸送コストを削減する
再生利用(リサイクリング)の利用 物流資材リサイクル(プラパレット)スキーム構築、リサイクリングにより、環境負荷及び調達コストを低減する
エネル
ギー源
新技術の利用 サプライチェーンでのフードロス削減や低炭素商品への需要が増加し、それに対応した当社製品(環境配慮型商品・サービス)の売上が増加する
製品及び
サービス
低炭素商品/サービスの開発、拡大
R&Dとイノベーションを通じた新製品・サービス開発
ビジネス活動を多様化させる能力
消費者の好みの変化
健康ニーズの高まりやSDGsの価値観浸透により、環境保全・健康に貢献する当社グループの PBF (プラントベースフード)製品に対する需要が拡大する
レジリ
エンス
(回復力)
資源の代替/多様化 原材料調達先の多様化によりコストを削減し、調達不能リスクを減少させることで、顧客からの信頼を獲得し売上が増加する
対応策 具体的内容
脱炭素社会実現へ向けた設備投資 ・省エネ設備の採用
・太陽光発電設備の導入
低炭素な原材料・資材を使用した商品開発の推進 ・リサイクルパレットへの切替
・代替原料を使用した商品開発
GHG排出の少ない輸送方法での原材料調達 ・内麦の購入
・船舶輸送への切替
BCP強化による調達リスク低減 ・高潮対策強化
・水調達リスク評価の徹底

リスク管理

 サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別、評価、管理するため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ実行委員会」を設置し、多角的な視点で対応しています。
 本委員会は、気候変動をはじめとする環境、健康経営推進、HC(ヒューマンキャピタル)の3分野について実務的な検討、具現化等を図ります。
3つの分野それぞれが一連の状況について代表取締役社長に報告、共有し、代表取締役社長の監督のもとで実施しております。
 また、気候変動に関するリスクは、「サステナビリティ実行委員会」の下部組織である「環境部会」で議論し、全社的なリスクを扱う「リスクマネジメント委員会」と共有されます。いわゆる「VUCA」が一層高まり、変化のスピードが従来以上に加速され、また未知のリスクに対する対応も求められる中で、可能性を含め当社グループが直面するリスクについて洗い出し、重要リスクの優先順位付けとその対策を立案します。「リスクマネジメント委員会」は事業遂行、災害対策、コンプライアンス、情報セキュリティの4部会で構成しており、各部会においてそれぞれ担当の事案を検証し、必要に応じて対応します。

指標と目標

 当社グループでは2017年度より事業活動におけるCO2排出量(以下、「Scope1、2」という。)の把握・管理を継続的に行い、今後はサプライチェーンにおける排出量(Scope3)の把握に努めてまいります。また、Scope1、2の排出量削減目標を策定中です。
 当社グループが展開している食品事業は、製造業の中では比較的環境負荷が少ない業種ですが、事業活動による「エネルギーの使用」は、対処すべき課題と考えており、エネルギー使用量が低減できる設備を積極的に採用するとともに、原料輸送についてもCO₂排出量の少ない海上貨物輸送に積極的に切り替えを進めるなど、今後もCO₂排出量削減に取り組んでまいります。

CO₂排出量の管理

 ニップングループは、事業活動における「エネルギーの使用」を対処すべき課題と考え、CO2排出量削減に取り組んでいます。

CO2排出量と推移

2020年度 2021年度 2022年度
CO₂排出量
(千t-CO
国内 42 44 44
海外 3 3 3
国内外 45 47 47
CO排出原単位
(t-CO/千t)
24.3 25.5 24.8

2020年度 2021年度 2022年度
CO₂排出量
(千t-CO
国内 108 109 110
海外 5 5 5
国内外 113 115 115
CO排出原単位
(t-CO/千t)
60.5 60.5 59.9

 また、当社の製粉事業部門を対象として2022年度のScope3におけるCO2排出量を算出しました。
 算出に当たっては、GHGプロトコルの〝Technical Guidance for Calculating Scope3 Emissions Supplement to the Corporate Value Chain(Scope3)Accounting & Reporting Standard〟とその評価ガイドラインおよび、環境省・経済産業省の〝サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(Ver2.5)〟を参照しています。

Scope3におけるCO2排出量
カテゴリ 指標 CO2排出量
上流 1 購入した製品サービス 3,099.3千t-CO2
4 輸送・配送
5 事業からでる廃棄物
6 出張
7 雇用者の通勤
下流 9 輸送・配送 20.9千t-CO2
12 販売した製品の廃棄
合計 3,120.2千t-CO2
その他
カテゴリ
2 資本財 データの詳細を把握することは難しく、本カテゴリは対象外とした
3 Scope1、2に含まない燃料
8 リース資産(上流)
10 販売した製品の加工
11 販売した製品の使用
13 リース資産(下流)
14 フランチャイズ
15 投資
※ 排出係数は環境省・経済産業省の〝サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス等の算定のための排出原単位データベースVer3.3〟を利用。

気候変動対策

 ニップングループは、気候変動対応を経営上の重要課題と捉えています。気候変動により干ばつや多雨などの異常気象が深刻化・増加することは、当社の主力商品の原料である小麦の収穫量減少につながる要因のひとつです。平均気温の上昇も小麦の収穫量減や品質低下にも繋がるとともに、原材料コストの上昇に繋がるリスクとなり、消費者に安定した品質の商品を提供し続けることも難しくなって、消費者の食生活に大きな影響を与える可能性があります。これらについては当社の信用リスクに関わる課題として、対応してまいります。
 一方で、これを新たな商品開発への取り組み機会とし、小麦の品質を維持するための高度な製粉技術の構築や、新規素材を活用したビジネスモデルの多角化を進めています。品質が異なった小麦粉でもおいしいパンが焼けたり、麺を打ったりできるような、新たな調理法・レシピを得意先や消費者に対して提案していきます。
 また、当社グループが展開している食品事業は、製造業の中では比較的環境負荷が少ない業種ですが、事業活動による「エネルギーの使用」は、対処すべき課題と考えています。対策として、エネルギー使用量が低減できる設備を積極的に採用するとともに、原料輸送についてもCO排出量の少ない海上貨物輸送に積極的に切り替えを進めています。今後も気候変動対応を当社の重要な課題と位置付け、取り組みを推進していきます。

再生可能エネルギー設備の導入

 竜ヶ崎冷食工場と伊勢崎工場では、省エネ対応の一環として、太陽光発電設備を導入しています。竜ヶ崎冷食工場では2022年12月上旬から、伊勢崎工場は2023年1月上旬から稼働を開始しました。今回の設備導入で、2工場あわせて年間発電量は約1,000MWhを想定しており、CO₂排出量は年間460tの削減を見込んでいます。
 今後も全員参加でさらなるCO₂削減に取り組んでいきます。

外部イニシアティブへの参加

 2015年のパリ協定成立を受けて、今、世界各国で、企業や自治体、NGOなど、国家政府以外の多様な主体(non-state actors)が気候変動対策の中で大きな役割を果たすようになってきています。日本でも、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するためのゆるやかなネットワークとして、「気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)」が立ち上がりました。宣言「脱炭素化をめざす世界の最前線に日本から参加する」の呼びかけに応え、当社も賛同を表明しました。

Japan Climate Initiativeのロゴ

物流における取り組み

CO₂削減

エネルギー消費量

単位 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
CO排出量 t-CO ※1 44,232 47,407 48,775 47,768 52,645
エネルギーの
使用に係る
原単位
Kℓ/百万トンキロ※2 30.7 32.9 32.7 30.4 32.7

海上輸送

 当社は、鉄道貨物輸送へのシフト活動とは別に、フェリーを利用した海上貨物輸送に切り替える活動にも取り組んでいます。その結果、海上輸送を通じて環境対策に貢献する企業の証である「エコシップマーク認定制度」において認定事業者に選定されています。

エコシップマークのロゴ

脱フロンへの取り組み

 空調機器や冷凍・冷蔵機器の冷媒として利用されているフロンガスには、大気中に放出されるとオゾン層を破壊すると共に、COの数千倍の温室効果があります。2015年4月には「フロン排出抑制法」が施行され、定期・簡易点検やフロン漏えい量などの報告が義務付けられています。
 当社グループは、国内の全事業場において、対象となるフロンガス利用機器をピックアップ、管理台帳を作成して、機器容量に応じた点検・整備を実施しています。機器の購入・更新から廃棄に至るまでの履歴を明確にし、自主的な管理基準を設定してフロンガス漏えい防止に取り組んでいます。CO換算で1,000t以上のフロンガスの漏えいが生じた場合は、フロン排出抑制法にもとづき報告を行っています。
 脱フロン推進のために主要な冷凍冷蔵機器について、2016 年度から順次自然冷媒を使用した機器へ更新を進めており、今後も新規導入する機器は100%自然冷媒機器へ切り替えてまいります。